約 1,394,784 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5112.html
さて、では現在の私の状況を説明する。 特筆すべき事態は皆無の状況を維持していたのはこの放課後までだった。即ち、この放課後に特筆すべき事態が発生したということにほかならない。 珍しく沈黙を守っていた涼宮ハルヒが突然再起動し、この文芸部室にまで引きずられた。 容姿・生体的基礎能力、そして性格が他を非常に大きく逸脱したこの女子生徒は私の高校生活最初の日から私の後ろの席に居座っていたのだが、彼女は他を拒絶 してるようであったし、私も興味はなかったので、これまでと同じように時々友人(補足すると中学から異性としての要素を考慮にいれない付き合いをしていた国木田君や高校から話すようになった数人の女子生徒だ)と話をしながらも大半では黙々と読書にふける学校生活を送っていた。 どうやらそれがいけなかったらしい。 私は客観的に見れば、正にという無口文学少女だろう。しかし私は一人の人間であり、全く話さないわけではない。少々口下手なのを自覚してるのも合間って自発的に話し掛けないだけで、話が始まれば無口なりに話すし、常に無表情というわけでもない。友人もそれなりにいる。 だが、彼女の他を大きく逸脱したエキセントリックな感性に対して私というキャラは見事にマッチしてしまったらしい。 『あんた、気に入ったわ!今度からあんたのこと、有希って呼ぶから!』 『……そう』 そして、クラスで唯一彼女とコンタクトをとれるという理解に苦しむレッテルが追加されて数日が経ち、かくかくしかじかなことがありつつも、新しい部活を作ればいい、と叫ばれ、現在に至る。 確認しよう。私は彼女に特別干渉するようなことはしていないし、影響を与える可能性が高いことも言っていない。 なら何故、私はここにいるのだろう。 【もしもシリーズ壱号作:長門とちぇんじ】 さて、前述のように私はこの涼宮ハルヒという人物によって私の在学する通称北高の果てに存在する部室棟の三階にある文芸部室にまでつれてこられたわけなのだが、 「これからこの部屋が、我々な部室よ!」 「……少し待って欲しい。ここは文芸部室のはず」 現に、窓側にパイプ椅子を置いてそこに座り、片手に文庫本を持ってぼうっとしたようすでこちらを見つめる、文芸部員らしき男子生徒がいる。 「そ。でも今年の春に三年生が卒業して部員ゼロ。新たに誰かが入部しないと休部が決定していた唯一のクラブなのよ。で、こいつが一年生の新入部員」 予想は当たったらしい。 「……では休部になっていないはず」 「似たようなもんよ。一人しかいないんだから」 似て非なるものだと思う。 「しかし、あの人はどうするの」 「別にいいって言ってたわよ」 「……本当?」 「ええ。昼休みに部室貸してって言ったら、好きにすればいいさって。ゆっくりできればそれでいいらしいわ。高校生にあるまじきグータラぶりは、相当変わってるわよねぇ」 変わってる、という事に関して貴女が言える事は無いと思う。 「ま、そーゆーことだ。俺はキョンと呼ばれている。一つ適当によろしく頼むよ」 「……長門有希。こちらこそよろしく」 その声は、落ち着いて堂々とした声だった。容姿は一見して普通、しかしよく見ると結構高い水準にある。しかし、これはこの際関係無い。 「彼女はこの部屋を理解するに困難な部活動の部室にしようとしている。それを、許可するの」 「ああ、別に構わん」 「……しかし、恐らく多大な迷惑をかけると予想される」 「それはそれでいい」 「……そのうちこの部屋の専有権の放棄を迫られる可能性もある」 「そんときはそんときさ。なるようになる」 「…………」 思わず、絶句。よく考察すれば、彼の目的に当該の部室の絶対的必要性は著しく低い。故に生じる無関心さなのかもしれない。 「ま、そういうことだから。これから放課後、この部屋に集合ね! 絶対来るのよ!! 来なかったら、死刑だから!!!」 「…………了解した」 むしろ、圧し負けたというに近い。しかし、死刑は嫌。 そして翌日。 彼女は私に先に行くよう指令を下し、廊下へと消えた。 部室に到着した私だが、既に彼は来ており、少々行儀の悪い体制で文庫本を片手にしていた。そして、私も読書家だ。珍しく、興味が沸いた。 「何、読んでるの」 「ん、よう長門。本か、伊坂幸太郎の『重力ピエロ』だよ」 眼鏡を通して彼の文庫本を確認する。確か、若い層に人気のある作家だ。 「面白い?」 「ああ、中々ユニークだ。ジョークのセンスも話もな」 「本、好き?」 「暇つぶしの手段として優秀だな。地球人類の創りだした文化の極みだよ」 「……そう」 とりあえず、読書仲間が増えるのであれば先の狼藉も有益かもしれない。 そこから、同性の私からみてもかわいらしいと評価できる朝比奈みくるという先輩がかつての治安維持法も驚愕するような理不尽な理由で強制召喚され、色々あったのちに傍観に徹していたキョン(これで通すことにする)をしばし見詰めてから入部したり、男子生徒が一人追加されたりしたが、割愛する。 むしろ、重要なのはこちらの方。 「おお、そうだ長門。これ、読んでみろよ」 そういう彼に渡されたのは、伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』という一般的なハードカバーの小説。読んだことはない。 しかし彼が奨めるのだから面白いのだろう、と判断して素直に受け取る様を彼が少し神妙な顔でみていたことが少し気になった。 結局、私は今読んでいる本を読み切っておきたかったので借りた本はまだ手を付けていない。 それを読んでいたかのように、彼が私に催促した。私は違和感を覚える。彼は自発的理由から他人に余計な干渉はしない。私や朝比奈みくるの世話などはしてく れるが自らの考えからの行動は少ない。 私は帰り次第、妹をなだめてすぐに本を開いた。そして30分程読んで、挟まれていた栞の存在に気が付いた。 《午後七時、光陽園駅前公園で待っている》 時計を見て、素早く財布を持って、妹に用件を託し、タイミングよく来たタクシーをつかまえ駅前公園へ向かった。時間と距離的にその方がよい。滅多に使わないため、余裕があった。 公園に到着した私は、小走りで公園を回り、ベンチを横になる彼を視認した、と同時にそれを知っていたかねような悠然とした動作で彼が起き上がる。時間にはまだ少し余裕があったようだ。 「今日で、よかった?」 「ああ」 「……もしかして、昨日も?」 「まあな。別に気にしなくていいぞ」 「……何故、ここに?」 「なにかと都合がいいからな。さて、こっちだ」 数分喋るでもなく歩いた先にあったのは、この辺では知れた高級マンションだった。エントランスを抜け、玄関をくぐり、エレベーターで上がって、着いたのは少し殺風景な部屋だ。そしていま、私達は彼のいれたお茶を挟んでこたつを介し、向き合って座っている。 「…………」 「…………ふぅ、少し熱いな、失敗だ。気をつけてくれ」 「……家の人は?」 「いないぞ」 あまり健全な状況ではない。流石に動揺してしまう。 「……お出かけ?」 「いや、最初からいねえよ。俺しかな」 一人暮らしだろうか、初耳だ。 「ん~、まあそうなるな」 少し曖昧な返答をした彼は、再びお茶を注いだ。 「それで、用は?」 すぐには答えず、注ぎ終えたお茶をさしだして、「飲んでくれ」と、彼は言った。従って、飲む。 「うまいか?」 首肯する。事実、美味しかった。彼は、「そうか」とだけいって、こちらを見詰めてくる。 「じゃあ、なんでお前をここに連れて来たかなんだが、」 一拍おいて、 「涼宮。涼宮ハルヒのことだ。んで、俺のことでもある。お前に教えておこうと思ってな」 「……涼宮ハルヒと貴方が、何」 パターンからいえば恋愛沙汰だろうが、この場合役者が明らかにおかしい。私という人選もまた然りだ。 「そうじゃねーよ。うまく言語化できんな。情報伝達に齟齬が発生するかも知れんが、でも聴いてくれ」 それが、思えば実質的な『それら』の全ての開始だったのかもしれない。 「涼宮と俺は、普通の人間じゃないんだ」 「……前者はわかる。しかし、貴方は……」 「ああ、いや、そうじゃないんだ。性格に普遍的な性質を持っていないだとか頭の中が年中ハレハレのパラダイス状態だとかそういうんじゃなくてだな、文字通りの意味で、あいつと俺はお前のような大多数の人間と同じとは言えないんだ」 結構散々に言っている。しかし、本番はここからだったようだ。 「この銀河を統轄してる情報統合思念体によって創られた、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェイス、それが俺ってわけだ」 「………………?」 「あ~、通俗的な用語を使うとだな、宇宙人に該当する存在に当たるな」 「……宇宙……人……?」 二つの意味で、信じられなかった。 話自体もそうだが、彼はこんな小学生も信じないような嘘をいう人ではないし、そのためにわざわざ呼び出すなど尚更、更にいちいち難しい言い回しをするようなこ ともないはずだ。 現在の状態は、困惑。 「俺の仕事は涼宮ハルヒを観察して、入手した情報を情報統合思念体に報告することなんだ」 「………?」 「生み出されてからこの三年間、俺はずっとそうやって過ごしてきてた。この三間は特別な不確定要素もなく、至って平凡だったよ。しかーし、最近になって無視のできんイレギュラー因子が涼宮ハルヒの周囲に現れた。それが、お前だ」 「情報統合思念体にとってだな、銀河の辺境に位置するこの星系の第三惑星に特別な価値なんかなかったんだ。ところがどっこい、現有生命体が“地球”と呼称するこの惑星で進化した二足歩行動物に“知性”と呼ぶべき思索能力が芽生えたことによってだ、その重要度は増大したんだな。ひょっとしたら、自分らが陥っている自立進化の閉塞状態を打開する可能性があることを否定できんからだ。宇宙に遍在する有機生命体に意識が生じるのは有り触れた現象だったんだが、高次の知性を持つまでに進化した例は地球人類が唯一だったんだし。 情報統合思念体は注意深くかつ綿密に観測を続けていたんだが、三年前に惑星表面に他では類を見ない異常な情報フレアを観測した。弓状列島の一地域から噴出した情報爆発は瞬く間に惑星全土を覆って、惑星外空間に拡散したのさ。その中心にいやがったのが涼宮ハルヒで、そっから三年間色んな角度から涼宮ハルヒという個体に対して調査を行ったんだが、まだよくわかってないんだ。 それでも情報統合思念体の一部はあいつこそが人類の、んでもって情報生命体である手前等にも自立進化のきっかけを与える存在として涼宮ハルヒの解析を絶賛実行中ってわけだ。 情報生命体であるやつらは、有機生命体と直接的にコミュニケートができん。話せんからな。人間は言葉抜きに概念を伝達できんだろ。んだから俺みたいな人間用のインターフェイスを創ったんだな。情報統合思念体は俺を通して人間とコンタクトできるんだよ」 一気にそこまで喋ったためか、彼が唇を湿らすように湯飲みを口へ運ぶ。 「つまりだ、涼宮ハルヒは自立進化の可能性を秘めてる。まぁ大方、あいつは自分の都合の良いように周囲の環境情報を操作する力があるんだろうよ。それが俺がここにいる理由、んでもってお前がここにいる理由って筋書きだ」 「待って。理解しがたい」 「信じてくれ」 ……それは乱暴すぎる。 「そもそも何故、私なの。……いや、百歩譲って貴方の情報統合思念体云々という話を信用したとして、何故私に正体を明かすの?」 「お前は涼宮ハルヒに選ばれたからな。あいつは意識的か無意識的かはわからんが、手前の意思を絶対的な情報として環境に影響を及ぼしてる。お前が選ばれたのにも何かしら理由はあんだろ」 「……無い」 「あるな。お前と涼宮ハルヒが全部の可能性を握ってる」 「……本気?」 「勿論、えらくマジだ」 同じクラスの「谷口」と呼称される男子生徒のように口数が多いわけでもなく、基本的に現実しか見ないリアリストのような彼が、唐突に私に饒舌になったかと思うと、延々と非現実的なSF話を聞かされた。このように特殊な思考回路を有する人物だとは、想像もつかなかったというのが正直な感想。 「まず、そのような話であれば涼宮ハルヒ自身に話したほうが喜ばれると思われる。私はSF的な話題を好んでいないわけではないが、現実的でない話を現実に反映させるようなものには着いていけない」 「情報統合思念体の意識の大部分はな、涼宮のヤツが自分の存在価値と能力を自覚しちまうと、予測のできん危険が生んじまう可能性があると認識してんだ。今はまだ様子を見るべきだな」 「私が今聞いたことを、涼宮ハルヒに伝える可能性がある」 「まぁ確かに、あいつはお前からもたらされた情報を重視するだろうよ。だがあいつの思考回路はともかく知識は結構常識的でな、早々鵜呑みにしたりはしない。これは大多数の人間にも言えることで、現にお前だって今の内容を信じ込んではいないだろう?」 ……悔しくも、理に適っている。 「情報統合思念体が地球においているインターフェースは、俺一つじゃない。情報統合思念体の意識の一部は、積極的な行動を起こして、情報の変動を観測しようとしてやがる。んでもって、お前は涼宮のヤツにとっての鍵みたいなもんだ。危機が迫るとしたら、まずお前だな」 …………。 それから、某男子生徒の登場や、朝比奈みくるから前述の話と類似した、加えて言うなら属性が宇宙から未来へと変更されたかのような話をさせられ、それに起因して彼の話が少し信じられるような気がして来たと伝え、図書館へ行き、などという探索があったのだが、その辺りは原作を想像で改変してから自らの脳内で展開させておいて欲しい。結果はどちらにしろ同じ。ちなみにその後、某男子生徒改め古泉一樹より超能力的話も聞いた。以上。 そして、舞台は世界を朱へと染める太陽の断末魔が出番となった時間帯の教室へと跳ぶ。基本的にこれは電波小説だ、しっかりと着いてきて欲しい。 団活終了後、私は朝に下駄箱より確認した手紙に従い、教室のドアを開け、そこにいた人物を目にし、非常に意表をつかれた。 ――朝倉涼子 私の所属するクラスの委員長を務め、その任を見事にこなしてクラスを纏め挙げている、中々の手腕を有した女子生徒だった。 彼女は私と目を合わせてから、ゆっくりと教室の中心へと歩き出す。彼女の足音が異常なほど良く聞こえた。 「入ったら?」 穏やかな微笑と共に私の入室を促す。若干の驚きの意味を込め、私も言葉を返した。 「……あなたが?」 「そ。意外でしょ?」 意外だ。放課後に教室を呼び出すほどの用事が、彼女にあるとは思えない。近日中に何らかのイベントも無く、前提として私は何の役員にも属していない。 「用は?」 「用があるのは確かなんだけどね……、ちょっと訊きたい事があるの。涼宮さんのことね、……どう思ってる?」 また、涼宮ハルヒ。しかし彼女は涼宮ハルヒの孤立を警戒して幾度かコンタクトを試みようとしていた、その話だろうか。だがそうであれば、俯いてもじもじとする必要性は見つからない。 「人間はさ、よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔するほうがいい』って言うよね。これは、どう思う?」 「よく言うかどうかは知らない。しかし、言葉どおりの意味であると思われる」 「じゃあさ、例え話なんだけど、現状を維持するだけではジリ貧になることはわかってるんだけど、どうすればいい方向に向かうかわからないとき、あなたならどうする?」 「……話の意図を理解できない。日本経済の話?」 「とりあえず、何でもいいから変えてみようと思うんじゃない? どうせ今のままでは何も変わらないんだし」 「……そういうことも、あるかも知れない」 「でしょ? ……でもね、上の方に居る人は頭が固くて着いていけないの。でも、現場はそうもしてられない。手をこまねいていたら、どんどんよくないことになりそうだから。だったら、もう現場の独断で強行に変革を進めちゃってもいいわよね?」 ……本格的に話が理解できない。どっきり、といわれるものだろうか。掃除道具入れにでも、誰かが隠れているのかもしれない。 「何も変化しない観察対象に、わたしはもう飽き飽きしてるのね。だから、」 そして朝倉涼子は、一拍を置いて、嬉しそうに、 「あなたを殺して、涼宮ハルヒの出方を見る」 ――瞬間的な本能だったのかもしれない。 私は妙な気配を感じた瞬間に僅かに体をずらし、紙一重に朝倉涼子の持つナイフから逃れた。かすった部分の制服や、リボンが見事に切断されている。 思わず、息を呑んだ。朝倉涼子はナイフを持ち、私と対峙している。 この状況は何。何故私が朝倉涼子にナイフを突きつけられなければならないのだろう。彼女は何と言った。『私を殺す』? 何故。 「……冗談は止めて欲しい。本当に危ない。実際に切れているところから本物であると推測される、正直に言えば怖い」 こんな状況でも、何気に冷静でいられて且ついつもどおりの平坦な声が出る事に、内心流石に呆れた。 「冗談だと思う? ふ~ん……」 理解に苦しむ、といった表情で彼女はナイフを弄び始めた。理解に苦しむのはこちらの方。 「死ぬのっていや? 殺されたくない? 私には、有機生命体の死の概念がよく理解できないんだけど……」 「意味が理解できない上に面白くもない。いいからその危険物をどこかに置いて欲しい」 笑顔で言われた。 「うん、それ無理。だって私は、本当にあなたに死んで欲しいんだもの」 言うが早いか、朝倉涼子は素早くナイフを逆手から順手へと持ち直し、こちらへ飛び込んできた。かなり速い。しかし、直線的な動きだったおかげで何とかかわすことができた。直線的な動きは次の行動へと支障を生じる、その隙に教室外への逃走を試みたが、何故か扉は消えていた。 「無駄なの。今この空間は、わたしの情報制御下にある。出る事も入ることもできない」 もはや何も理解できない。理解できた人間はこの場へ来て、私に説明して欲しい。困惑していた。 「ねえ、諦めてよ。結果はどうせ、おんなじなんだしさ」 できないことをいう彼女と一定の距離を取る。 「……あなた、何者?」 しかし彼女は答えず、変わりに回りの机や椅子が跳んできた。反射的に反対方向へと逃げる。 教室の隅に来た時には、教室は手榴弾が暴発したかのような凄惨な状況へと変貌し、瓦解した壁からは幾何学模様の渦巻く空間が露出していた。 私は悪あがきとして、手近な椅子の足を握って、彼女の方へと投げる。 「むだ」 予想に反して勢い良く跳んで言った椅子が、彼女の目前で不可視の壁にはばかられたように空中に静止して、何故かプラズマのようなものを放出している。 「言ったでしょ、今この教室は私の意のままに出来るって」 いい終えると同時に静止していた椅子が弾かれた。さながら某絶対恐怖領域だ。 ふざけている場合ではない。私を殺して涼宮ハルヒの出方を見る? また涼宮ハルヒ。彼女は人気者のようだ。しかし、何故それで私が死ななければならないのだろうか。 「最初から、こうして置けばよかった」 正にそうだ。体が金縛りを受けたかのように動かなくなっている。神経接続の切断などではなく、感覚的には物理的に締め付けられているに近い。これは反則。 「あなたが死ねば、必ず涼宮ハルヒは何らかのアクションを起こす。多分、大きな情報爆発が観測できるはず。またとない機会だわ!」 ……そんなことは知らない。 しかし悪態をつく事もできずに、私は高々に降りあげられるそのナイフを眺めるしかできなかった。 「じゃ、死んで♪」 そして彼女が腰を落として体勢を作り、動き始めた瞬間に、私は砂塵によって視界を失った。聞こえるのは爆音。思わず頭部の保守体勢をとった。……保守体勢をとった? つまり、体が動く。恐る恐る目を開くと、 「っ!?」 目の前にはナイフの切っ先、そしてそれをつかみ痛々しい血を流している手と、 「……キョン……?」 文芸部の少年を確認した。息遣いから、朝倉涼子が息を呑むのを察することができる。彼――キョンは、ゆっくりと喋り始めた。 「一つ一つのプログラムが甘いな。それと側面部の空間封鎖、あと情報封鎖も甘い。だから俺に気付かれちまって、侵入も許す」 「邪魔する気? この人間が殺されたら、間違いなく涼宮ハルヒは動く。これ以上の情報を得るには、それしかないのよ?」 「お前は俺のバックアップだろうが。独断専行は許可されてないってんだよ。俺に従うべきじゃないのか?」 「嫌だと言ったら?」 「仕方ねぇから情報結合でも解除してやるよ」 「やってみる? ここではわたしの方が有利よ? この教室はわたしの情報制御空間」 「はいはい、言ってろ。んじゃ、情報結合の解除を申請するぞ」 適当にあしらうように彼が言った直後、忌々しいナイフが切っ先から光の粒子へと変貌して分解されていく。質量保存の法則は何処で迷子になってしまったのだろうか。 それに気付いたらしき朝倉涼子は常識はずれにも五メートルほど高く跳躍して交代した。オリンピック選手が馬鹿馬鹿しくなりそうだ。私は既に、この2人が人間ではないのだと、本能から悟った。 朝倉涼子の右手が閃光を発した瞬間、よくわからないが『何か』が跳んできた。しかしそれは彼の張ったらしいバリア的な『何か』によって受け止められたらしく、消滅した。安心したのも束の間、即座に多重一斉攻撃が開始されていた。そして、肉眼で確認出来ないほどに速く動かされている彼の腕がそれらに対抗していた。 唐突に、彼の反対側の手が私の頭に乗せられた。 「離れるなよ」 言うと同時に彼の手に力が込められ、私はそれに従って自然にその場へ座りこんでいた。視点を変えたからか、朝倉涼子の攻撃は見えないまでに加速された槍状のものであると、本能的に察した。生態的危機からか、脳の本能的部分が通常より機能しているらしい。だがすぐさま、背後で爆発が起きた。防ぎきれなかった攻撃によるものだろう。 「この空間では私には勝てないわ」 ベタな戦闘系フィクションの悪役が一度は言いそうなことだ。彼は答えずに、私には聞き取ることのできないような速度で何かを呟いた。高速詠唱と言うものだろうか。 「パーソナルネーム朝倉涼子を適正と判定する。当該対象の有機情報連結の解除を申請するぞ」 つまり、お前に勝つぞということ。 「あなたの機能停止の方が早いわ」 つまり、勝つのはこっちということ。しかし彼女の方は実態が何処にいるかがつかみにくいようなエコーがかかっている。 気がつくと、先ほどの朝倉涼子のように高く跳躍した私がいた。違う、跳躍した彼に私が小脇に抱えられているようだ。上空から、先程まで私がいた場所が爆発に飲み込まれているのを確認した。 「危ね。危機一髪だったな」 やれやれ、などと彼は悠長に溜息をついていた。緊張感のなさに頼っていいのか、穿っていいのか、判断しづらい。 「その娘を守りながらいつまで持つかしら」 朝倉涼子の高速詠唱と共に先程の高速槍状物体による多重攻撃が開始され、彼はそれを避けながらそれでも当たりそうなものを弾いている。 一瞬、視界がぶれたかと思うと私たちは彼女の背後にいた。高速移動か、空間歪曲による瞬間移動だろう。Gを感じなかったところから見て、後者だろうか。などという考察を終える前に彼女はこちらへと向き、次の瞬間には攻撃を放っていた。 ……これは、当たった。 そう、私は思った。これまで見えなかった槍状物体が、今度はハッキリと見えた。目を閉じる。 覚悟した衝撃は訪れず、感じ取ったのは私の眼鏡が落ちたことと、 「……!!?」 幾つもの槍に体を貫かれた彼の姿だった。それを見てから、私は彼に庇われたのだと初めてわかった。 「……ぁ……」 思わず、声が漏れる。刺さった箇所は医学的に見て、肺や胃をはじめ肝臓や気道をも貫いている。人体急所諸々だ。出血の量もおびただしい。しかし、彼は安心したかのようにゆっくりとため息を吐いた。 「……お前は動かなくていいからな。大丈夫、平気だ」 穏やかな微笑を浮かべる彼だが、滴り落ちる彼の血液の雫が、ぴちゃん、という音を鳴らしているのが、嫌に生々しく、おぞましかった。少しも平気に見えない。普通は死亡確定コースだ。 彼は刀を抜くかのような動きで、気道部分に刺さった槍を抜き、捨てた。捨てられた槍は少し間をおき、机の姿へと回帰していった。机でできているらしい。 「それだけダメージを受けたら、他の情報に干渉する余裕はないでしょ? じゃ、とどめね」 さも嬉しそうにいってくれる。振り下ろされた彼女の袖口からは、白く光る触手が伸びていた。その姿は、さながらシャムシエル。 「死になさい」 即答で拒否できそうな命令をいってくる朝倉涼子だが、彼女の触手と化した腕は彼の両胸を貫いた。衝撃から飛び散った彼の血液が、私の顔へと引っかかる。肺どころの騒ぎではなく、もう心臓を壊している。本来即死コースだ。 即死コースにもかかわらず、彼は動いて右手で光る触手へと触れた。 「はい、終了だ」 「何のこと? 貴方の三年あまりの人生が?」 「違うぞ、むしろそれはお前のほうだな。……情報連結解除開始だ」 彼が呟くと同時に、教室、いや元教室にある全てのものが光の粒子になって分解され始めた。さて、質量保存の法則はまだ迷子センターにも行きついていないらしい。 「そんな……」 「お前はまあ結構優秀だ。だからこの空間プログラムを割り込ませるのに今までかかったんだ。でも、もう終わりだな」 「……侵入する前に、崩壊因子を仕込んで置いたのね。道理で貴方が弱すぎると思った、予め攻性情報を使い果たしていたというわけね」 「まあな。おかげさんで、割とダメージを受けちまったが確実な方向で行きたかったしな」 「じゃあ、もし最初にあなたの言う通りにしてたら?」 「俺が見誤ると思うか?」 「……あ~あ、悔しいなぁ。全部お見通しだったんだね。所詮わたしはバックアップだったかぁ……。膠着状態をどうにかするいいチャンスだと思ったのにな」 「やかましい、待てないからって無理やり行動すんのはどこかのアホか、子どもぐらいなもんだ。大人しくしてりゃあよかったものを……」 「ふふっ、同情してくれるんだ。嬉しいなぁ……。うん、そうね。わたしも、もういいわ。負けたんだし」 朝倉涼子は、そのあどけない笑顔をそのままにこちらへと向いた。……そう、彼女は『子ども』だったのだろう。 「よかったね長門さん、延命できて。でも気を付けてね? 統合思念体はこのようにいくつも相反する意識を持ってるの。いつかまた、私みたいな急進派が来るかもしれない、それか、キョン君の操り主が意見を変えるかもしれない」 「従わんがな」 「そうかもね」 彼の言い分に、朝倉涼子がおかしそうにころころと笑った。 「それまで、キョン君や涼宮さんとお幸せに」 崩壊が首元まで進んでいた。そして、最後に彼女は、明るく笑った。 「じゃあね」 そして、朝倉涼子は『消えた』。それと同時に、彼が膝から崩れる。 「キョン……!」 私はほぼ無意識的に素早く彼の元に寄り、 「……しっかりして。今、救急車を」 読んでどうする。この状態は普通死んでいるはずだ。自らの焦り具合に再び内心で呆れた。 「いや、いい。肉体の損傷は大したことないからな。正常化せねばならんのは、まずこの空間のほうだな。不純物を取り除いて教室を再構成する」 見ると、360度砂漠な空間だった。しかし突如爆発が起こったかと思うと、回りの砂が失せていき、いつのまにか夕暮れ時の教室へと回帰していた。 彼は床に倒れ、私はそのそばに跪いている。 「……本当に大丈夫?」 「処理能力を情報の操作と改変に回したからな、このインターフェースの再生はあと回しだ」 彼が身じろぐ。反射的に私は彼の後頭部をとり、反対の手で彼の手を動かして私と組ませ、起き上がるのを補助していた。 「今、やってる……って、お?」 彼が動きを止めた。 「どうか、した?」 私が言い終わるや否や、彼は私の顔を軽くぺたぺたと触りだした。少し、くすぐったい。 「っと、すまん。眼鏡の再構成を忘れちまった」 「……いい。貴方には、眼鏡属性はなさそう」 「眼鏡属性って何だ?」 「……ただの妄言。忘れるべき」 「……そっか、なら忘れたほうがいいな」 「いい」 この瞬間、不測の事態が起こった。……教室のドアが、 「うぃ~っす。WAWAWA忘れ物♪~……のぅわっ!!!?」 …………私は無口に該当されるが、この沈黙は痛いと感じる。 そしてこの体勢は、私の方から『致そう』としているようにも見えなくないわけで。 「……すまん」 何が。 「ごゆっくりっ!!!!」 だから何が。 「……面白いヤツだな」 「…………どうしよう」 「ん? ああ、任せろ。情報操作は得意だ」 記憶でも消せるのだろうか、と期待したのも束の間、 「朝倉のやつは転校した事にする」 「……そっち?」 などと冷静につっこみを入れている場合ではない。もしかすると私は、とんでもない体験をしてしまったのではないだろうか。先日、彼の語った非現実的な話を信用するしないの問題ではない。先ほどの事態は、私に本当の危険さとは何かを身を以て体験させた。これでは、彼が宇宙人であると言う事に納得せざるを得ない。真実か否化の論争を越え、事実としてやってきたのだから。 だが、このポジションは美味しくもある。なんだかんだいいつつも、常に彼に意識を置かれ、時に守られるという完全なヒロイン的ポジションで―――――― ………………… ……………… ………… ……… …… … 「…………ダメ」 「いいじゃないか長門。なにやってたのかを訊いてるだけなんだし」 まさか、現在の状況を構成する上で彼と私のポジションを入れ替えた場合の設定でシミュレートした結果を文字に引き起こし、本にして窓辺で読もうだなんて考えていることを、彼には言えない。しかもその結果がもう間違いなく『長キョン』といわれるルートをたどると見て、嬉しくて身もだえしてしまいそうだとも言えるわけがない。 「なにか打ち込んでるようだったが、今度は小説か?」 ……迂闊、彼は地球人類で唯一私の表情を完全に読む事に出来る存在。無敵の無表情でも、彼には通じず、些細な真情の変化をも読まれてしまう。熟年夫婦のようだ。…………それはそれでいいかもしれない。 「……人間は、好奇心から進歩を続けてきた。しかし故に壊滅した存在も多くある。多大な詮索は推奨しない」 「…………言い訳か「ちがう」 …………。 「ちがう」 「ああ、わかったよ、違うんだよな」 「そう。あなたは賢明」 「そりゃあんがとよ」 禁じえない、と言った様子で苦笑を浮かべる彼を、私は恨めしそうに見詰めているだろう。彼の手が私の頭に乗せられた。勿論、撫でるために。 「よし、図書館にでもいくか。ハルヒは風邪、古泉はそれゆえのバイトで、朝比奈さんは鶴屋さんのとこだし、何もせずに帰るのも面白くないだろ?」 「いく」 しかし、先程の設定では彼が様々な危ない目に合う。それは好ましくない。このままであれば私は彼を守る事ができるし、彼も私を守ってくれる。現在のままでは彼の件での敵性存在は多くあるが、他にはないポジションである事も否定出来ない。私は、彼を守る事ができるのだ。それが、私がここにいる理由。 「貴方は」 「ん?」 「貴方は、私が守る」 彼の手を捕まえて、強く、握る。 「信じて」 「信じてるぜ、長門」 「……そう」 ――読了―― 【……ユニーク】 朝倉「ねえ、わたしって明らかに消され損よね。ぴょこんと出てきて情報連結解除されただけじゃない」 喜緑「そのとおりですね。でも、貴女は少しでもキョンさんと絡む事ができた上に、ちょっといい雰囲気にも包まれていたじゃないですか。十分、折檻ものです」 朝倉「(ビクビク)で、でもさ、喜緑さんだって、あの設定だと好き勝手できるわよね!だって穏健派の喜緑さんは鍵たる存在であるキョン君との接触は最低限に限られてるけど、あれだと主流派のキョン君じゃない?プライベートにお付き合いできるじゃない!! ね、ね!!?」 喜緑「まあ……まあまあまあ!!! 何と素晴らしいんでしょう、つまり強引に《禁じられたワード》を進めちゃったりとか、思い切って《禁じられたワード》して《禁じられたワード》にしてもいいってことなのですね? あらあらあら、とても素晴らしい世界ですこと。では早速、涼宮さんから『力』のほうを頂きに……」 九曜「――私……も――冬に――彼を――……うれ……しい―――」 天蓋「可愛い妹と私自身のために! 情報統合思念体にはこの件に関しては協力するわ!」 朝倉「……じゃ」 喜緑「行動は」 九曜「――素早く」 天蓋「進めるべきね!さあっ、続きなさい!!」 (注意兼あとがき:この件に関しては続きません。よい子のみんなは期待しないでくださいね♪ もし続きが欲しければ、ご自分でお書きになるのが得策かと♪ それでは、次のキョン君は誰とちぇんじするのかな? 気長に待とう!! See you again!!) 裏会合 ハ「あたしたちって、何だったのかしら?しかもここですら簡略化されてるし、さっきより」 古「いえ、我々の名字では字数を統一できません。僕たちは二文字ですが、朝比奈さんは三文字だ」 み「で、でもぉ、三人とも名前の方は三文字なんですけどぉ……」 ハ「そうよね。つまりこういうことも可能なのかしら。……えい!」 ナルシスホモ「……おーけー、落ち着きましょうか涼宮さん。僕はリリンです」 ハ「似たようなもんよ。(その属性は互いに)一人しかいないんだから」 み「首ちょんぱですぅ」 ナルシスホモ「神人にですか?」 ハ「神人って何?」 ナルシスホモ「何でもありません。ただの妄言です」 み「ナ……古泉君、心証のなんとやらですかぁ?」 ハ「言いかけたわね。まあいいわ、とりあえず言いたいことは色々あるでしょうね、読んでる奴ら。有希って、キョンをキョンって呼ばないわよね」 み「デフォルメでしゅ」 ハ「2人とも、何か喋った?」 み「いえ……。あ、でもポジションがころころ変わるみたいですねぇ」 作「しかしながら気分によって書くんで、必ずしも続編が出るとは言いがたいんです。短編連作、何処から読んでも大丈夫。途中で切れても大丈夫。連載を途中でブツるよりマシでしょう」 ハ「作者が乗り込んでくるの、ちょっと痛いかしら。長いし。でもそれって逃げてるだけね、周りから、何より自分から」 作「うん」 み「最後だけ少し、綺麗でしたねぇ」 作「私は元々シリアス畑。そっちが本職です。電波と言うのは副職のようなものです。賛否両論あるとは思い……たいのですが、これにて終わりです。ではまた。 ……あと、そこに転がってるの何です?」 キ「リリンのタブリスだろ」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5236.html
二 章 Illustration どこここ 「……起きて」 長門の声で目が覚めた。 「おう、おはよう」 俺はこめかみを抑えた。自分の声が頭にガンガン響く。長門が二日酔い用の薬と水を持ってきてくれた。 「すまんな……」 俺は頭をかきむしりながら起き上がり顔を洗いにシンクに向かった。リビングの壁にかかった自分のスーツを見て、言うべきことを思い出した。 「長門、昨日はすまん。俺どうやってここまで来たんだ?まったく覚えてないんだが」 「……午前一時に、電話があった」 「それで俺、なにか言ってた?」 「……意味消失していたが、昔好意を抱いていた女性の話」 ま、まじか。そんなたわけ話をしたのか俺は。 「そ、それから?」 「……会話の途中で意識を失った。わたしが迎えに行った」 長門に抱えられてここまで来たのか。マンションの七階まで。なんて野郎だ。 「あの、俺、なんか変なこといたしました?」 妙に壊れた敬語だが、聞くのも怖い。 「……なにも。そのまま眠った」 よかった。長門の表情をもう一度探ってみたが、どうやら本当のようだ。 「あのさ、俺が酔って変なことしようとしたらブン殴ってくれ。気絶させてもいいから」 「……分かった」 まじめにうなずいた長門はちょっと怖かった。北高の教室で朝倉と戦ったとき長門に蹴飛ばされた、あの脚力を思い出した。しばらく酒は飲まないことにしよう。 顔を洗って鏡を見るが、ふつーのいつもの俺だった。顔色は悪いが。 「あの、長門?」 「……なに」 「このペアのパジャマいつ買ったんだ?」 「……むかし」 長門はそれしか答えず、少しだけ微笑した。かなり前ってことは確かだな。 「シャワー借りていいか」 「……いい。バスタオルを用意しておく」 熱めのお湯を頭からかぶった。これで酒が抜けてくれると助かるんだが、昨日いったいどれだけ飲んだんだ。 浴室の壁にもたれてシャワーの熱をむさぼっていると、少しずつ脳が目覚めた。泡が体を伝って排水口に流れていく。この浴室も、使うのは実は今日が初めてだったりする。 ── ここが、 昨日、鏡の中の野郎が言ったことのそこから先が思い出せない。浴室を出ると棚にバスタオルが置いてあった。その横にカミソリとヒゲ剃り用の泡があった。泡を搾り出して顔に塗った。 なにか分からない、微妙な違和感があった。鏡を見ながら思った。これがいつもの自宅の鏡ならなんでもなかっただろう。横で妹がドライヤをかけていたり足元をシャミセンがうろついて踏んづけそうになったり。だがここは長門の家なのだ。俺は戸惑っていた。神聖にして不可侵な長門空間でヒゲなんか剃っている、ということに。 「あ、痛て」カミソリが横滑りしちまった。 「さっぱりした。ありがとよ」 キッチンをのぞくと、あろうことか長門が……あろうことか長門が……割烹着を着て朝飯を作っていた。その格好はいったいなんなんだと言おうとしたが、振り向いた長門があまりに似合っていたのでドキリとした。こんな朝っぱらからときめいたりして俺も若いよな。 「その割烹着、に、似合うと思うけど」 「……ありがとう」 手ぬぐいを姉さんかぶりにして、おばあちゃんがやるような格好で味噌汁の味を見ている。 「……味、見て」 小皿にダシを注いだ。俺は受け取ってすすった。 「うん。いいんじゃないか?」 俺の推測だが、長門は俺の好みをずっと研究しているようだ。味噌汁の分子構成がどうなっているかは知らないが、長門の作る有機物およびミネラルの化学的配合比は完璧に近い。 それにしても楽しそうだな。ミリ単位で違わぬ長さで刻まれるネギの音がどことなくリズミカルなのは気のせいではあるまい。 「……うん、楽しい」 あうっ、いかん。振り向いた長門の表情にまた萌えた。 味噌汁と卵焼き、焼き魚の純日本の健康的な朝飯が整った。俺と長門は正座して慎ましやかに食卓を囲んだ。長門は茶碗に山のように丸くご飯をよそって俺にくれた。 「……食べて」 「いただきます」 二人は手を合わせていただきますを言った。まずは、青ネギがたっぷり浮かんだ甘味のある白味噌の味噌汁。 「味噌汁がうまいな」 「……そう」 二日酔いの朝には味噌汁がいい。長門はご飯の山を切り崩しながらもくもくと食った。テーブルには箸立てと醤油挿しが並び、窓から射してくる朝日が、二人のお碗からゆっくりと立ち上る湯気を照らしていた。こうして長門と朝の食卓を囲んでいると、ここがまるで──。 「……どうしたの」 「い、いや、なんでもない」 ここがまるで、俺の居るべき場所のようじゃないか。 たいして汚れてないんでいちいち着替えに帰ることもなかろうと、俺は昨日のシャツのまま出社した。昨日電話しそこなったので今朝になって自宅に連絡を入れておいた。飲み会だったんで友達んちに泊まったとごまかしたのだが、妹が邪推して女の人んちでしょ~と歌うようにからかって俺はしどろもどろに否定してしまった。 マンションを出て長門と並んで歩いた。こうやって隣に長門がいるのはいつもならデートなのだが、今日は同伴出勤だ。電車は通勤客でごった返していた。ひとり分空いている席に長門を座らせた。 「……ありがとう」 「いいって。今日は大学はいいのか」 「……学会発表が終わったから、しばらくはいい」 かけもちでご苦労だな。そのうち海外出張とかもあるんだろうけど、博士論文が終わるまではできるだけ支援してやらないとな。 事務所があるビルに入るとき、長門と二人で出社しているところを誰かに見られないかと気になった。別にやましいところがあるわけじゃないんだが、「俺たち同伴です」みたいなところを見咎められたくないような。 長門と付き合い始めた頃にこそこそ隠れたりしてハルヒに怒られたことがあったんだが、かといって堂々と今そこで会いました的な偶然を装って入るのもどうかと。そんな俺の気持ちを察してかどうか、長門は、 「……先に行って」 「分かった」 ああ、内心ほっとしている自分が情けない。 「おっはよ」 「おう。おはよう」 この社長はいつもニワトリ並みに出社が早い。俺が遅刻すると全員にお茶をおごる規則だけはここ八年間変わることがない。後から長門が入ってきた。 「……出社した」 「おっはよ有希、ちょっと待ちなさい二人とも」 「……」 「あんたたち、今日はなんか変ね」 「な、なにがだ」 ハルヒは鼻先をくんくんと俺の顔やらスーツやらに近づけた。 「あんた昨日家に帰ってないでしょ」 な、なんで分かったんすか。 「しかも、シャワー浴びて朝ご飯まで食べてきたわね。そうでしょ、有希」 その鼻は警察犬から移植でもしたんですか。俺と長門は顔を真っ赤にして目をそらした。ハルヒはケラケラと笑った。 「ふーん。お熱いことねぇ」 「い、いや。昨日は酔っててだな。目が覚めたら長門んちにいたんだ」 「ふーん」 「眠ってたから何もなかったんだから」 「あんたなに慌ててんのよ。あたし何も言ってないでしょ。キヒヒヒ」 ううっ。これをネタにしばらくおもちゃにされそうだ。 「あんたたち、いっそのこと一緒に住んじゃえばいいのに」 「お前ったら突然なにを言い出すんですか」 俺は動転している。限りなく動転している。 「家も職場も近いし簡単じゃないの。同棲よ同棲」 「いきなりそう言われてもな」 考えたこともなかったが俺ってウブなのか。俺は長門を見た。長門の表情は、なにかを期待しているような、でもあからさまには言い出したくないような、微妙なところだった。 俺は「それもいいかもしれんな。考えとこう」などと、適当にお茶を濁すような返事をした。たまに泊まってるうちに荷物が少しずつ増えて、なし崩し的に一緒に住んでたりしそうだな。自然発生的でいいかもしれん、なんて甘いことを考えているとハルヒに釘をさされた。 「ただし、ちゃんと相手のご両親に挨拶に行くのよ。隠れてこそこそやっちゃだめよ」 「わ、分かった」 すべてお見通しだった。 古泉と昼飯を食った。 「ハルヒが俺に同棲しろと言うんだが」 「ええっ、あなたと涼宮さんがですか!?」 「俺と長門がだよ」 「考えたらそうですね。失敬しました」 古泉、自分の立場が分かってないだろ。 「まさかないとは思うが、お前同棲した経験は、」 「残念ながら僕にはありませんね」俺が最後まで言い終えないうちに言葉を継いだ。 「じゃあその、未経験ながらどう思う?」 「よろしいんじゃないですか、二人とも大人ですし。自分のすることに責任は取れるはずです」 最近じゃ、ちゃんと責任が取れる大人がどれだけいるかあやしいもんだがな。 「予行演習と思えばいいでしょう」 「な、何の予行演習だ?」 古泉の発した次の言葉が、古代中国宮廷の銅鑼ような音色で俺の脳内に響き渡った。 「結婚ですよ。そのご予定なんでしょう?」 ううっ。考えてもみなかったと言えば嘘になる。ちゃんと計画的に検討していたと言えばそれも嘘になる。いつかはちゃんと考えるつもりだったと言うともっと嘘になる。 俺はいつだって曖昧なのだ。周りが動いているうちはなんとかなると思っている。試験までの残りの日々を数えつつ、まだ大丈夫、まだ大丈夫だと自分を安心させて過ごす。可能な限りのモラトリアムな日々、それが俺の人生だった。 「もうそろそろ考えてもいい時期ですよ。あなたがたは」 ゲームが下手なはずの古泉に、少しずつ攻め込まれて俺は逃げ場を失った。俺は味方だと思っていたチェスの駒が寝返って全部敵になっちまったような気分だった。ポーン一同がこっちを見てニタニタ笑いを繰り広げている。頼みのクイーンもすでにいない。もしかしたら人生のツケがすべて今になって襲ってきているんじゃないだろうか。 「それともあなたは、長門さんがいつまでも待ちつづけるとお思いですか?」 古泉のチェックメイトが、槍のごとく胸に刺さった。 古泉と食った昼飯はまったく味がしなかった。ろくに噛まずにコーヒーで流し込み、打ち合わせがあるからと古泉に千円札を渡して先に戻った。事務所に戻ったが長門ともハルヒとも目を合わせられなかった。俺はなんでもないぞと自分を落ち着かせようと新聞を開いたのだが、そこに印刷された活字がすべて“結婚”に見えて目をしばたいた。めまいがして新聞をゴミ箱に放り込みトイレに駆け込んだ。 顔をザブザブと洗ってペーパータオルを何枚も取り出し、顔を拭いて丸めてゴミ箱に投げ込んだ。鏡に映った自分を見ながらほっぺたをペシペシ叩いた。落ち着け俺。どうってことはない、不用意に長門の部屋に泊まったりしたから動揺してるんだ。そうだ、アレルギーみたいなもんだ、すぐ治まる。 俺は何度も深呼吸して、それだけじゃ足りないかもしれないので風がそよ吹く緑の草原を想像した。それから鏡を見て営業スマイルを作り、ガッツポーズを取った。よし、俺はやれる。なにをだ。 部屋に戻って自分の椅子に座り、開発部に内線を入れてスケジュールの調整を話し合った。なんだぜんぜん平気じゃないか。俺は克服したぞ。俺はメモを渡そうと、受話器を耳と肩に挟んだまま長門のほうを振り向いた。長門の額には大きく結婚の二文字が書かれていた。驚愕に襲われて目をこすったがなにもなく俺は受話器を取り落とした。こいつはいかん、プレッシャーで目がおかしくなっちまってる。 「ちょ、ちょっと下に行ってくるわ」 俺はダッシュで逃げ出した。とくに用事はないのだがほかに逃げ込めるところがなかった。内線で話したのと同じ内容を繰り返すので部長氏は怪訝な顔をしていたが。俺は正直に、ちょっとだけここにいさせてくれと頼み込んだ。 「上で揉めごとでもあったのかい?」 「そういうわけでもないんですが。一時的にちょっと居づらくなってしまいまして」 「はっはは。よくあることさ。好きなだけいていいよ」 「ありがとうございます」 俺はうやうやしく頭を下げた。 「キミもケッコン苦労してるんだね」 「え、今なんと?」 「だから、キミも結構苦労してるんだろう。あの社長のそばにいるのは神経が磨り減りそうだからね」 俺はとうとう耳までどうかしちまったようだ。 「副社長もよく我慢してるね。あんなのと付き合ってたら嫁に行きそびれてしまうだろうに」 くそっここにも伏兵がいたのか。味方が全滅して命からがら逃げのびてたどり着いたところが敵の本拠地だった。誰か助けてくれ。 行く場所も逃げる場所もなく俺はまた自分の机に戻り頭を抱えた。軽くノイローゼになっちまってる。 「キョン、あんたどうかしたの?」 「い、いやなんでもない」 「さっきから挙動がおかしいわよ。熱でもあるんじゃないの」 ハルヒは俺の額に触れようとした。 「俺に触るな」俺はその手を振り払った。 「なに怒ってんのよ、熱を見ようとしただけじゃないの」 ハルヒにぐいと耳を引っ張られた。いかん。完全にどうかしちまってる。 「すまん……ちょっと頭痛がするんで今日は早退するわ」 「具合悪いんだったらちゃんと病院行きなさいよね。最近は若年の脳溢血が多いんだから」 縁起でもないこと言わないでくれ。俺はカバンをひったくって逃げるようにして部屋を出た。 病院には行かず家にも戻らず、俺は電車で終点まで行き映画館で昼寝をしていた。何の映画をやっていたのかすら覚えていない。 最終上映が終わり、掃除に来た従業員に起こされて俺は映画館を出た。時計を見ると七時を回っていた。ふらふらとどこに行くでもなく、腹が減ったのでファーストフード店に入った。四時間は眠ったはずなのになぜかすっきりしないこの目覚め。味気ないハンバーガーをかじりながら俺はぼんやりと窓の外を見ていた。 「あれ、もしかしてキョンじゃないか!?」 後ろから声をかけられビクッとした。こんなところでこんな気分のときに知り合いに遭遇するなんて。振り返ると、ガタイのいい見るからに体育会系のアルマーニスーツ野郎が立っていた。 「ええと、思い出せないんだが。誰だっけ」 「忘れたのか。俺だよ俺」 そいつは地面に膝をついて、右手を脇に抱え、今しもスタートダッシュを切ろうかという格好をしてみせた。 「相撲取りに知り合いはいないが」 「ちがうだろ、アメフトだアメフト」 「ああ、思い出した。中河か」 こいつを忘れることがあろうか。長門にひとめ惚れし、緻密なる人生設計を提出した末、十年後に迎えに行くから待っていてくれと愛を謡ったやつだ。その恥ずかしい恋文を長門の前で読み上げてハルヒに締め上げられたのは俺だったが。 「その節はいろいろとすまんかったな」 中河は体格に似合わず顔を赤く染めた。 「いやまあ、あのときは俺たちも楽しんだ」 「そりゃそうだ。あんなケッタイな手紙は大爆笑モンだ」 中河は大声で笑った。自分の恥ずかしい歴史をすっきり爽快笑い飛ばせるなんて清々しくなったな。思い出して二人で笑った。 「暇なら飲みに行かないか」 「これからか」 「もちろんだ。俺のおごりだ」 おごりってことなら行く。今日はいろいろと忘れたいこともあるんでな。 こいつの通いの店らしい、地下街にあるひなびた居酒屋に入った。 「キョン、あれからどうしてたんだ」 「いちおう会社勤めだ」悲しいことに、ハルヒが社長のな。 「どんなことやってんだ」 「ええと一言で説明するのは難しいんだが、ソフトウェアの開発とかやってる」 「ほう、ってことは同業者か」 中河はポケットから名刺入れを取り出した。俺はうやうやしく受け取った。この両手で小さな紙片をやり取りする日本の習慣が俺には未だに不可思議だ。 「なんと、中河が代表取締役かよ」 「ああ。もう四年になるかな」 「四年ってことは大学には行かなかったのか」 「行ったさ。学生のときに起業したんだ」 すごいな。俺たちがワイワイ遊んでた頃すでに社長だったんだな。 「中河テクノロジーって、そういえばこの会社の名前最近よく聞くな」 雑誌でもよく見る大手グループの傘下だ。 「まあ業界では上昇気流に乗ってるからな。こないだ二部上場した」 こいつの言ってた十年間の人生ロードマップよりすごいじゃないか。軽く五年くらい前倒しだぞ。 「いい人材に恵まれただけさ。俺自身は開発には深く関わらない。いちおう情報工学出だが」 「あのとき言ってた経済学部じゃなかったのな」 「経営者がプロダクツの中身を知らないでどうする」 中河は笑った。そこへ行くと俺は自分がなにを売ってるのかさえ、いまいち理解してない。 「お前んとこはどんなシステム作ってるんだ?」 俺は返答に詰まった。 「ええと、俺はあんまり詳しくないんだが。人工知能を使った他のシステムの統合管理というか」 「ほう。面白いことやってんだな。今度見せてくれ」 「ああ。そういう話は俺より長門のほうが詳しいと思う」 口元まで動いていた中河のグラスがそこでピタリと止まった。その名前を耳にして中河の口元が緩んだ。 「長門有希さんも同じ職場なのか」 「ああ。あの頃つるんでたメンバーはみんないるさ」 「そうか。元気にしているのか、長門さんは」 「相変わらずだ。あのままだな」 俺から見ればだいぶ変わったところもあるが。 それから中学時代の話に戻り、佐々木の一件やらもネタになった後、俺と中河は店を出た。 「いい職場にいるみたいだな、お前」 「そうか?」 「その会社、大事にしろよ。好きなことが自由にやれるってのはシアワセなんだからな」 「ああ」俺はそれなりに苦労してる気もするんだが。 「そのうち挨拶にでも寄るわ。人工知能の構造も見てみたいしな」 「分かった。来るときは電話をくれ」 中河は手を振って夜の町に消えた。その背中が俺なんかよりずっと貫禄があるように見えた。 翌朝、昨日に引き続き頭痛がするからとハルヒに電話して午後出社にしてもらったが、まさか昨日飲んでたなんてことがバレたりしてないだろうな。 昼になってもまだぼんやりとした頭をシャワーでなんとかごまかして、重い体を引きずり電車で出社した。駅前は昼飯を食いに出てくるビジネス街の社員でごった返していた。みんなと同じ時間に出社しないなんてなんとなく後ろめたい気分だ。 いつもより重たく感じる我が社のドアを開けると社長椅子が空いていた。珍しく客が来ているらしくパーテーションの応接室から声がする。 「キョン、ちょっと来なさい。あんたにお客様よ」 「誰だ?」 「おう、キョン」 中河が突然現れた。来るなら電話しろつったのに。 「遅いわよ、あんたを訪ねて見えたのに」 「具合が悪くてな」 昨日一緒に飲んでただろ、という感じで中河はニヤリと笑った。 「ええと、ハルヒ、中河のことは覚えてるよな。アメフトの」 「もっちろんよ。あんたが来るまであのときの話で盛り上がったわ」 中河は体格に似合わず照れた表情をしてわははと笑った。 俺は長門を呼んで引き合わせた。中河は長門の手を取って両手で握った。 「ご無沙汰しております。その節はいろいろとご迷惑をおかけしました」 「……」 かつて惚れられた、というか勝手に熱を上げて勝手に冷めてしまいサヨナラを告げられた相手に、長門もどう応じたものか迷っているようだった。 「羽振りいいんだってね、中河さんのところ」 「ハルヒ、中河の会社知ってるのか」 「当然じゃない。テレビでインタビューに出てるの見たわ」 「いえまあ、仕事内容より名前だけが先走りしてましてね」 中河は体を揺すってはっはっはと笑った。よく笑うやつだな。 ハルヒと中河は同じ経営者同士で話が合うらしく、業界の裏話やらこれから流行るかもしれない技術ネタなんかで盛り上がっていた。ハルヒがIT業界ネタについていけてるとはちょっと意外だったがそれなりに勉強はしているらしい。少なくとも俺よりはな。 「聞けば人工知能を開発されているとか。ぜひ拝見したいものです」 「もっちろんいいわ。キョン、中河さんにうちの開発部を見せてあげて」 「俺は構わんが、部外者に見せていいのか長門」 「……問題ない」 まあうちの商品は簡単にはまねできないようなもんばかりだし、長門の設計をパクれるようなやつはそうそういないだろう。俺は中河を連れて三階の開発部の部屋を案内した。 開発部のドアを開けるとあいかわらず阿片窟のようなありさまで、部長氏に来客を告げるとあわてて雑誌やらパソコンのパーツやら袋菓子やらをロッカーの棚に放り込んでいた。リサーチと称して他社のゲームをやっていた部員はあわててモニタの電源を切った。 「ちょっとあんたたち!昨日までちゃんとかたづいてたのになによこれは」 いや少なくとも二週間はこの状態だと思うぞ。散らかった息子の部屋をかたづけるおふくろのように、ハルヒがイライラとゴミなのか備品なのかわからんクズを段ボール箱にかき集めた。 「部長氏、こっちは中河テクノロジーの中河社長だ。俺の中学のときの同級生だが」 「は、はじめまして。部屋がカオス状態でして恐縮ですが」 「はっはは、弊社も似たようなものです。特にモノが生まれる現場では」 部長氏はウエットティッシュで丁寧に手を拭いてから中河の手を握って振った。 「部長氏、例の人工知能のデモ見せてもらえる?」 「ちょうどいい、次のバージョンをテストしているところだよ」 三十インチはありそうなでかいディスプレイの隅っこに3Dのフィギュアみたいなアシスタントが現れた。メイド服を着て丸いメガネをかけている。 『こ、こんにちわ。あの~、なんなんですか皆さん、その方はいったい誰なんですかぁ、どうしてわたしはメイド服なんですかぁ?』 知ってる誰かに、しかも若い頃にすごく似てる気がするんだが。これ、本人の許可取ってんのか。 部長氏がマイクに向かって話しかけた。 「みちるちゃん、今日の予定教えてもらえる?」 『あ、ちょっと待っててくださいね。ええっと、メモどこやったのかな……んと、んと』 秘書としてはあんまり技能的に秀でてないっていうか、モノ忘れが激しそうっていうか、時間が過ぎてから予定を告げられそうっていうか、これじゃ仕事が進まんだろうけどそれはそれで萌えどころか。 『あ、あった。ありました。ええとですね、今日のスケジュールは、十二時からわたしとお昼ご飯です。ほ、ほんとにわたしなんかでよかったんですかぁ、受付の女の子とかのほうがよかったんじゃ』 飯を食うだけがスケジュールなんてどこの天下りだよ、と苦笑しつつ中河を見ると凝視するほど画面に見入っていた。 ピロリンと音がして画面にメールのアイコンがポップアップした。 『わぁ、誰かからメールが来ましたよ、うふっ』 「みちるちゃん、メール読んでもらえる?」 『えっと、タイトルはですねぇ“十六才の女の子です、お友達になってください”。わあ、女の子からお手紙ですよぅ。きっと学校でお友達ができなくて部長さんにお友達になってほしいんですね。本文はぁ、“夜ひとりでベットでいるのが寂しいの”……こ、これ以上は禁則事項ですっ』 真っ赤になっているミニ朝比奈さん、それは仕事のメールじゃなくて世に言うスパムってやつですよ。 『好青年の部長さんをかどわかすなんてさせさまさせん!わたしが守ってみせまーす。み、み、ミチルビーム』 いつぞやの朝比奈ミクルの変身のテーマがパパララーパパパーと流れ始め、メールのアイコンを目から飛び出すビームで勢いよく燃やした。メイドにしては嫉妬心が強いっていうか怒らせるとファイルを壊されそうで怖いっていうか、どうでもいいくらいに凝った演出の上にセリフを噛んでいるところまで忠実に再現されているようなのだが、いったいどういう技術を使ってるのか実に気になる。 ニヤニヤ笑いの部長氏はCCDカメラのレンズを塞いで中河にメモを渡した。 「中河さん、ちょっとこの番号に電話をかけていただいていいですか」 「え、はいはい」 中河が携帯に耳を当てていると画面の中の電話が鳴ってミニ朝比奈さんが飛び上がった。これ、電話回線と直接対話できるのか。 『キャ、あ、電話だ、どうしましょう』 とりあえず受話器を取ればいいんじゃ、ってダイヤル式黒電話ですか、レトロ趣味にもほどがありませんかそれ。 『あ、あの、もしもし……SOS団開発部です』 デスクトップにペタン座りをして、消え入りそうな声のミニ朝比奈さんが受話器を重そうにしながら耳に当てた。 「中河と申しますが部長さんはいらっしゃいますか」 『あ、あのですね、部長さんは今ご不在で、たぶんそのへんにいらっしゃると思うんですが……もしかしたら机の下でお昼寝中かも』 「じゃあ伝言をお願いしてよろしいですか」 『伝言ですかぁ、伝言なら得意ですっ』 「ではいきますよ、坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた」 『ま、待ってください、ええっと坊主がジョーズの映画を見に行った、と』 どんな生臭坊主だよと突っ込まれそうなくらいにいい伝言ゲームになってるな。 「それから、カエルぴょこぴょこみぴょこぴょこ、」 『か、カエルは苦手なんですっ、ヒヨコとかにしてもらえませんかぁ』 中河、あんまり朝比奈さんAIをいじめるな。 「部長さん、これはどうやって動いているのでしょうか?」 「実は僕たちにもよく分かっていないんですが、正確には自律思考型業務支援仮想人格クラスタと言いまして、副社長の設計によるものです」 部長氏は外様向けの仕様書を中河に見せた。ページをめくる中河の手がプルプル震えている。 「これは今までに例のない次世代のプログラム技術ですね。一社独占で国際特許ものだ」 そんなにすごいシステムだったのかこれは。 「すばらしい、ぜひうちにも導入したい。グループ全社にも紹介したい」 ちゃんと仕様を読んだかオイ、こんな秘書システムでいいのか。じっと食い入るようにモニタを見つめる中河の両目にピンク色のゴシック体太字で“萌”の字が写っていた。やれやれ、こいつも同族だったのか。 「今すぐ仮見積もりを出すわ。まいどありぃ」 ハルヒはニヤリと笑って部長氏の肩を叩いた。やれやれ、ミニ朝比奈さんでお得意様一名確保か。中河ならミニ長門のほうがよかったんじゃないのか。 人工知能と簡単に言ってもいろいろあって、全部が全部、ロボット型の男の子がフェアリーテールを探して旅をしたり、人類を発電所の電池代わりにしてしまったりするというもんでもない。最近よく知られてるのが映像から人の顔を識別する画像認識プログラムで、カメラの映像からその人の顔かたちと一致するかを判断する門番の役をしていたりする。カメラに向かって写真を見せられたら本物と区別できないっていう間抜けな門番だが。ほかにも、身近なところでは大手通販サイトなんかでよく“この商品を買った人はこんなモノまで買っています”なんていう、ただ売りつけたいだけじゃないのかと疑わしくなるような商品列挙をしてくるサービスがあるが、データマイニングという一種の人工知能らしい。カーナビに向かってしゃべるとちゃんと反応して道案内してくれるのも、一応は人工知能だ。 この長門が作った人工知能はカメラからの映像やマイクの音なんかのデータを拾うのは同じだが、ごちゃごちゃしたまわりのデータからテーマを決めて意味のあるものに組み立ててから理解するという今までにはなかった造りをしていて、そこが売りなんだとか。作ったというよりは育てたというか、元はウィルスなんだがね。 中河はこの朝比奈さん、じゃなくて人工知能がいたく気に入ったらしく、俺にはよく分からない専門用語を駆使して長門に質問を浴びせていた。 「バックで動いているDBですが、どういう構造なんでしょうか」 「……人の記憶プロセスを模倣し、複数の時間軸を含めた多次元構造を擬似的にリレーショナルに格納している」 「ということはあのキャラクタは黙っていてもデータを蓄積しているということですか」 「……そう。自らの思考プロセスを含めてすべて記憶している。データ加工の工程もまたデータになる」 「主時間は今までの人工知能にはない概念ですね。しかし主時間を二十四時間記録し続けると膨大な量になりませんか」 「……四六時中というわけではない。業務時間以外にはもっぱら過去データの分析と再構築が行われている。通俗的な用語を用いるなら、昼寝」 長門が、画面上でミニ朝比奈さんがうたた寝しているところを再現してくれて、そのあまりのかわいさに野郎三人共にハァとため息をついた。 突発的なデモが終わりハルヒは中河を連れて開発室を出た。部長氏は突然の来客に緊張していたらしく大きな脱力系ため息とともにソファにぶっ倒れてそのままぐうぐうと眠った。 「涼宮さん、これまでの導入実績の件数はどれくらいですか」 「そうね、まだ両手と両足に余るくらいかしら。なんせ人が足りないからね。この先二年は予約でいっぱいよ」 「そうだったんですか、今日中に仮契約をお願いできませんか。必要なら手付けの小切手を切りますが」 「あら気前がいいわね。いいわ、キョンの知り合いってよしみで最優先でやってあげる」 「おいおい中河大丈夫か。コンビニで買い物するのとはわけが違うんだぞ」 「なに言ってんだキョン、こんな業界をひっくりかえすような製品を手に入れられるチャンスはそうそうないぞ。社長決済で役員を説得してみせる」 八桁の買い物を事後承諾でぺろりと決済できるとは、お前のところはワンマン社長っぽいな。まあうちは売る立場だし、まったく構わんのだが。 「今後の事業展開はどのようにお考えですか」 「そうねえ。信頼できる会社に技術供与をして、代理店契約してもいいかもね。この秘書はまだ特許申請中だけど、ライセンスは高いわよ」ハルヒはニヤリと笑った。 「その折には、代理店第一号をぜひうちにご指名ください」 「いいわ。うちはまだ新参だから流通が狭いしね」 中河の目がキラリと光った。驚くべきことをサラリと言った。 「涼宮さん、よろしければうちの傘下になって流通を使いませんか」 アタックオブ中河 Episode_00とでもタイトルを振ってやろうかという勢いで、突如襲来ではじまったソフトウェア販売契約の話が、妙に利害が一致するらしい社長同士の会話の流れで会社の買収にまで発展してしまった。ハルヒときたら野心丸出しで、相手が上場企業なもんだから世界にSOS団の名前を知らしめる絶好のチャンスだなどとのたまっている。 「俺は反対だ」 「あんたが反対しても鶴ちゃんが決めることでしょ。とはいっても、この会社はあたしに一任されてるわけだし、あたしの一存ってことになるわねぇ」 「そりゃそうだが、俺たちは会社を売るために作ったわけじゃないだろう。モノ作りのためだろ」 「別に会社を売るわけじゃないわよ。先方の持ってる顧客とマンパワーを使わせてもらうだけよ」 「それだけじゃないだろ、傘下になりゃ財政も経営方針も握られてしまうぞ。そうやって提携の泥沼にハマって会社を乗っ取られたりするんじゃないのか」 「これが業界ってもんでしょ、あんたは杞憂しすぎよ」 「俺はずっとこの五人で地味にやっていければと思ってたんだが」 「この会社を作るとき最初に言ったわよね。生き馬の目を抜くスピードの今の時代じゃ、ベンチャーしかないって。会社経営ってのは生モノなのよ。いつまでも同じところにしがみついていたら流れに乗り損なってしまうわ。買収なんて会社が成長していくための小さな流れのひとつよ」 まあ言ってることは分かるんだが、それにはちゃんとした方針っていうか目標っていうか経営の方向性があってのことでだな、行き当たりばったりで好きなことをやってる俺たちが言えることじゃないと思うんだが。 「買収ってことは株主が変わるってことだ。つまり今の取締役会は解散ってことだろ、お前は俺たちをクビにしたいのか」 「あたしはクビにはならないわよ。あんたならまあ、部長にでも採用してあげるけど」 「俺は職が欲しくて言ってるわけじゃないんだがな」 「あんたがそこまで言うなら、いいわ。ストックオプション付けてあげる」 「金の問題じゃねえよ!」 俺はハルヒの机をドンと叩いた。ハルヒが言っているのは、中河の会社の株を安く買える権利をくれるってことなのだが、俺はそんな数年分の年収を越すほどの金が欲しいわけじゃない。……いや、欲しいな。 翌日、ハルヒと長門は会社にいなかった。表向きは業務支援ソフトの営業だと言っていたが、たぶん買収の打診に行ったのだろう。企業買収ってのは資本の横槍が入ったり株価に影響したりするんで、極秘裏に進めるのがセオリーらしい。 「あいつらがいないとやけに静かだな」 「そうですね」 「古泉、お前はどう思ってるんだ」 「どうと申しますと」 「中河の買収話だよ」 「ああ、あれですか。よろしいんじゃありませんか」 「聞くだけ無駄だった。お前はいつでもハルヒの味方だからな」 「なにも贔屓目で賛成しているわけではありませんよ。少なくともここは涼宮さんが作った会社ですから、自分が不利になるような買収は受け入れないはずです。ということはSOS団のメンバーにとって不利益になるようなことは起こらない、と考えるべきでしょう」 「そんな悠長なこと言ってていいのかよ。株式会社ってのは資本を掴まれたらおしまいだぞ」 「今回の買収がどういう待遇で行われるのか、それにもよると思います。独立した事業部として編入されるのか、あるいは別の子会社として存在できるのか」 「跡形も残らないくらいに組織に吸収されたらどうするんだ」 「まあ、どうなるか今後の展開を見てみましょう」 機関という本業が別にあるからか、こいつはSOS団の行く末に少し能天気すぎる。グループ内に入ってしまえば子会社やら事業部なんてどうにでも再編されちまうんだが。 前にも話したかもしれないが、うちは簡単に株式を売ることはできない株式譲渡制限会社で登録している。会社を解散するとか売るとかしたいときは取締役会の同意が必要だ。なはずなのだが、不安に思って登記のときに作った定款を見てみると、役員の過半数の賛成が必要ってことになっていた。あんときはテンプレートを多丸さんにもらってそのままコピーして作ったのだが、今になって考えれば全員一致の賛成票にしとけばよかった。そうなれば俺一人ででも阻止できただろう。 反対と言ってるのはまだ俺ひとりなんだがほかのやつはどうするんだろう。長門は元々ハルヒの監視が役目だし、部長氏は意外とハルヒの尻に敷かれてるから賛成にまわるかもしれない。いやまて、それ以前に株主が株を手放す意思がないと成立しないはずだ。まかり間違って鶴屋さんがうちを叩き売ったりはしないだろうが、ハルヒのゴリ押しで売られないとも限らん。先に根回ししておこう。 俺は電話を取って鶴屋さんにかけた。 「キョンです」 『もしもーし、鶴ちゃんだよ』 「どうも株主さん、いつもお世話になっております。今ちょっと話せます?」 『いいよ。もしかして中河くんのことかい?』 「あれれご存知だったんですか」 『ハルにゃんからちょっと相談があるんだけどってメールが来ててね、近いうちに株主総会を開きたいらしいのさ』 鶴屋さんひとりの株主総会か。なんだか寂しいな。 「じゃあ単刀直入にお願いしたいんですが。鶴屋さん、反対票を投じてもらえませんか」 『キョンくんはいやなのかい?』 「なんというか、考え方が古いのかもしれませんが、俺は別に上場企業にならなくても持ち前の技術を売るだけの経営で細々とやっていきたいんです」 『キョンくんは根が職人なんだねえ。分からないでもないさあ』 その割には技術らしい技術は持ち合わせていませんが。 『買収っていうと聞こえが悪いけど、目的地にたどり着くために乗り物を乗り換えるって考えればいいんじゃないのかな。電車から飛行機に乗る感じでさ。うっとこも、会社そのものじゃないけど経営権を買ったり売ったり繰り返しながらきたんだけどね』 いっぱしの経営者らしく、思いのほか鶴屋さんは平然としていた。 「そうだったんですか。でも、自分が手塩にかけて育てた会社を売るのっていやじゃないですか」 『うーん。あたしはその会社が手を離れるのを“卒業”だと考えてるさ。同じ経営者が続けるより業界と景気にもまれたほうが企業としての競争力が強くなるっていうかね、まあモノにもよるんだけど』 「はあ、そんなもんですか」 『今SOS団は流れの速い業界にいるわけでさ、知識がなくてなにもアドバイスしてやれないあたしなんかが株主やるより、動向を知ってる親会社がついてたほうがいいってのはあるよね』 なるほどね。俺もそれくらい割り切ってこの会社をやっていければいいんですけどね。 「まあ株主さんがそうおっしゃるならしょうがないですが」 『いやいや、あたしはSOS団の経営にはタッチしないつもりだから。今後どうするかはハルにゃんの方針次第ってことさね』 電話を切る前に、鶴屋さんはひとことだけボソリと言った。 『でもね、ゼロから育てた、自分の子供みたいな会社が手を離れるのはやっぱり寂しいさ』 「たっだいまあ、みんな朗報よ!」 「……戻った」 「おかえりなさい、社長、副社長」 勢いよくドアを開いて入ってきたハルヒと長門を古泉が出迎えた。 「みんな集まってちょうだい。取締役会を非常招集するわ」 いよいよ来やがったか。多忙な部長氏も呼んで会議室に五人を集めた。 「聞いてるとは思うけど、我がSOS団がIT業界に躍り出る一世一代のチャンスがやってきたわ。大手企業グループの傘下に入るよう誘われてるの。具体的には中河テクノロジーに吸収合併されるんだけど、あたしたちは独立した事業部として活動できるわ。しかも部下が五十人に増えるのよ」 「すっごいじゃないか社長。中河テクノロジーといえばいまや花形だよ」 部長氏が目を輝かせて喜んだ。やれやれ、事業部編入か。ただの歯車だと思うんだが。 「まだあるわ。現在の取締役は起業とこれまでの労をねぎらって、新株購入権付き社債を受け取れるわ。まあ時価にするとひとり当たり二千万くらいだけど、将来は株価に比例して膨れ上がることは確実よ」 「株主の鶴屋さんはどうなるんだ」 「それはまだこれから相談しないといけないんだけど」 「おそらくですが、株式交換になるんじゃありませんか。もちろんレートは高いほうがいいですが」 まあ好意で出資してくれた鶴屋さんがそれで納得するならいいんだが。 「それにしても、二千万はたいした額の報酬ですね」古泉がうなずいた。「勝手ながら先方のIR情報の裏を取ってみましたが、あの会社の経営状態は非常に安定しているようです。まだ二部上場したばかりですが、顧客数も四半期純利益も右肩上がりに上昇。ITベンダーにありがちな株価の急騰急落もありません」 「でしょでしょ、あたしにはピンと来たわ。これは伸びるって」 お前のピンとやらを安全ピン程度に信用してもいいものかどうか迷うところだが、問題はそういうことじゃない。 「中河テクノロジーの決算書なんかどうでもいいんだがな、俺たちが今までやってきたことはどうなるんだ?」 「もっちろん全部ノシつけて持参よ」 「タイムマシン開発はどうするんだ」 全員が黙り込んだ。と思ったんだがひとり部長氏が不思議な顔をしてたずねた。 「あの、タイムマシンってなにかな?」 やべ、ここにひとりだけ秘密を知らされていない内部の人間がいた。 「あー、部長氏。これは守秘中の守秘で、うちでやってる研究事業のひとつなんですが。絶対に漏らしたりしないでくださいね」 「え……キミ本気で言ってるの?」 今にも笑い出しそうな部長氏だったが、この人はまだまだ正常な人間と見えるな。 「本気に決まってるじゃないの。特許申請もしてるわ」 「そうだったのかい」 「部長さん、これは一世紀くらい未来への投資と考えてください」 古泉が苦笑しつつとりなした。どう見ても冗談ではなさそうな四人の真顔を見て急にまじめな顔になり、部長氏はうなずいた。いざってときには記憶を消してしまうとか禁則をかけるとか、長門の手を借りないといかんな。 「で、どうするんだハルヒ」 「タイムマシンねえ……」 ハルヒは古泉を見て言った。 「実はもうタイムマシン開発の目的は達しちゃったのよねえ」 ハルヒが顔を赤く染めてシナを作り、古泉と目を合わせてニコっと笑ってみせた。 「もしかしてジョンスミスか、ジョンスミスだなオイ」 「えへ、じっつはそうなの」 えへじゃないよまったく。お前のタイムマシン願望のために過去に飛ばされたり未来に行ったり散々だったんだからな。 しかし困ったことになったぞ。歴史改変のフォローは過去だけだと思っていたが、このままだと未来にも影響しかねん。つまりハルヒのはじめたタイムマシン開発は朝比奈さんの時代に繋がっているわけで、それが必要なくなってしまうと俺たちの過去も危うくなる。ここはなんとか続けさせないと、俺は朝比奈さんに未来を託されているわけだからな。 「長門とハカセくんにあれだけ仕事させといて今になってやめるってのはどうかと思うぞ」 「今すぐやめるとは言ってないわよ」 「出資してくれた鶴屋さんにも申し訳ないだろ。秘密裏にでも進めてくれ。お前がやめるってんなら俺がやる」 「あんたに言われなくてもやるわよ」 ハルヒの願望とやらは欲しいものを手に入れてしまうと消えてしまうらしい。もしかしたら宇宙人未来人超能力者も消えてしまいかねん。安易に願い事をかなえてやるのも考え物だ。 「長門は買収についてどう思ってるんだ?副社長として」 「……わたしは部下に過ぎない。社長の意思に準ずる」 「お前が主力製品の業務を担当してるんだから、もっと忌憚なく意見を言っていいぞ」 主観での意見を求められて少し迷っているようだったが、やがて口を開いた。 「……十分な資金力のある企業の内部組織として活動することには一定のメリットがある。ただし将来的に二転三転して売却されることも考えておかなければならない」 かなりシビアな見方だが的を得ているな。買収のときに特許権やら技術資産やらが本社に持っていかれるのは必至だ。その後でもし中河の会社の経営がやばくなったら真っ先に売却候補に挙がるのは新参の俺たちだろう。あるいは中河の会社そのものがグループ内でバラバラに分解されるかもしれない。 今どきはグループ内の資産を分割して整理することが多く、子会社の株をひとつの持ち株会社に集めて経営権を集中管理するようになっているからな。そこで働く人たちも資産として扱われるらしく、正社員だと思って働いていたら実は関連の人材会社からの出向だった、なんてこともよくある話だ。 今は鶴屋さんの暖かい羽の下で好きなことをやって暮らしているが、そんな金と数字に分解されてしまう複雑な仕組みの中に入って俺たちが無事生き残っていけるのかどうか。 「ハルヒに古泉、その辺はどうなんだ?俺たち全員がバラバラになって、中河の企業グループの部品として生きていく覚悟があるのか?」 「次のステップに登るためならそれくらいの犠牲は必要でしょ。今までは経営戦略を固めるための予備期間だったけど、そろそろ実力を発揮する段階だと思うわ。目標は市場のシェア一位よ」 「今までが準備運動だったってのか。俺は今の顧客をベースにしてもっと足場を固めるべきだと思うんだが」 「まあまあ、僕たちはまだまだ小さな企業ですし、今だから冒険ができるというメリットを活かすチャンスでもあります。失敗してもまたやりなおせばいいんです。もし中河さんの会社が解散しても、僕たちが失うものはなにもありません」 「そ、そうよね古泉くん。入ってみて面白くなければやめればいいのよ。またみんなで会社作ればいいんだし」 「言うことはまあ、もっともなんだが」 「とにかくあたしはもっとでかいことをやりたいのよ」 「まあお前がそこまで言うなら、平の取締役の俺にはなんとも言えないさ。ただし、」 「ただしなによ」 「今日の議事録には反対票として記録してもらうぞ」 悲しいかな、それが俺のささやかな意思表示だった。 なんだかんだ言って俺はこの会社が気に入っていた。ハルヒが部活をはじめたときもそうだったが、最初は正体不明でなにをするのか分からない集団が、やっているうちにやめられなくなり、次第にそれなしでは生きていけなくなる。あいつの願望を実現する能力とか奇妙な空間や巨人を作り出す能力とは別で、ハルヒには人にわけの分からない生き甲斐を感じさせるという不思議な力がある。 もちろん本人が楽しいからやるんだろうが、飽きてしまうと別のことに目が行ってしまうのはいつものことだ。俺はどっちかというと同じところで同じ幸福を味わっていたい。可能な限りいつまでもそうしていたいと願うんだ。 ハルヒのやりたいことは分かっている。あいつはいつも遥か上を、自分の手の届かない場所を見つめて生きている。宇宙人を呼んだときも未来人を呼んだときも、タイムマシンを作ると言い出したときも。ハルヒの辞書には満足という文字がないのか、休む間もなく願い事を実現している。あいつにとっちゃ願いの星なんていくらでもあるのかもしれないが、俺にしてみればそんなひとつひとつの流れ星が希少すぎていとおしくて、もう二度と手に入らないかもしれないというか、いつまでも手の中で包んでいたい。今じゃそう思う。 ハルヒと長門と古泉は、鶴屋さんを連れて中河の会社に今後の打ち合わせに行った。俺はどうしても留守番すると言って行かなかった。どうせ平の取締役だ、俺の欠席のまま勝手に決議でもすりゃいいさ。 夕方、ハルヒから電話がかかってきた。受話器を取ると笑い声が漏れ出し、やたら上機嫌なようだ。 『キョン、あたしたち飲み会で直帰するからカギかけて帰ってね。暇ならあんたも来なさいよ』 「……」 俺は何も言わずに電話を切った。別にイライラしてるわけではないんだが、生まれては消えるやり場のないモヤモヤしたこれっていったいなんだ。 事務所のドアを閉めて帰ろうとすると、エレベータの前で長門に会った。 「直帰じゃなかったのか」 「……少し、話がしたい」 帰ってきた長門は少しだけ喜んでいるような、でも後ろめたいような複雑な表情をしていた。 「……本社で取締役の椅子を用意すると言われた」 そりゃまたえらい好待遇だな。社員二百人の会社の経営陣か。 「それで、OKしたのか」 「……まだ。株主と涼宮ハルヒが買収に応じれば、そうなるかもしれない」 そうなったら、技術知識の下地がない俺はいつか追い出されるかもしれんな。長門は天にも届きそうなビルの最上階で個室に秘書付き、俺はもしかしたら営業課長くらいにはなれるかもしれんが、どっちかといえば地面に近いフロアでぺこぺこ頭を下げながら働いている。あるいは退職金で食いつなぎながらハローワーク通いか。急に長門が手の届かない雲の上に行ってしまいそうな気がした。 ところが、長門が次に放った言葉の衝撃はもっと大きかった。 「……わたしと、付き合いたい、らしい」 俺は血の気が引いた。長門はじっと俺を見つめていた。一分くらいそうしていたと思う。 にらめっこは俺が負けて目をそらした。 「お前の好きにしたらいい」 ほんとはこんなセリフを言うつもりはなかったんだが。嫉妬とか自己憐憫とか自暴自棄とか、職を失うかもしれないという寂しさやらがぐるぐると渦巻いて、俺はもうどうにでもしてくれという気分だった。 「……」 「俺はお前を束縛なんかしないから。好きなほうを選んでいい」 「……本気で言ってるの」 「もちろんだ」 二人は真正面から見詰め合った。長門の漆黒の双眸は少し潤んで、握っている手が心なしか震えているように見えた。黙ってつかつかと俺に歩み寄り、右手を大きくふって俺のほっぺたをひっぱたいた。ぺっちんと乾いた音が廊下に響いた。 「……もう、いい」 長門はくるりときびすを返してエレベータに乗った。 「な、なが……」 俺が手を上げて呼び止めようとするも、無残にもドアが閉まった。俺は叩かれたほっぺたをなでつつ、そのまま固まっていた。あいつ、こんな意思表示もするようになったのか……。 三章へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2604.html
※性別反転+ふたなりもの注意 「やめろ!長門!」 そう叫んだ俺に、昨日まで彼女であった彼はいつもの口調で説明を始めた 「現在の貴方の体ががどういう構造か把握しなければならない。 これは統合思念体の意思。戻る為には多分、しなければいけない。規定事項。」 「ぐっ」 戻る為と言われたら多少の事は我慢しなければならないのだろう。 腕を後ろで縛られ、長門に自分の息子を弄られながら俺は頭の中で叫んだ 「なんでこんなことになっているんだ!」 ――起きたら女になっていたってのは最近よく聞く話なんだが・・・ 家出していると思われた息子はそのままだった。 溜め息の後にベットの中で呟いたね 「これなんてエロゲ?」 まあ、見慣れた息子がいることに安心した俺も俺だが、 どう考えてもパーツが多かったので、困った時の長門頼み、だ。 電話をしたところ長門の声が低くてビックリした。ベースの性別は入れ替わってるのか。 その時の会話はこうだ 「この世界は涼宮ハルヒによって改変された」 だろうな。予想していた答えが返ってくるって安心するんだな。 「で、世界中の人間が全員…その…ふたなり…に、なっているのか?」 「………違う。私と統合思念体にふたなりという概念は存在しないが、確実な事がある」 嫌な予感がしたが、今の俺に何ができるってんだ。 携帯から聞こえてくる長門の言葉を聞くしかないだろ? 「世界中の生物の性別が入れ替わっている。涼宮ハルヒも例外ではない。ただし、例外がある。」 嫌な予感は確信に変わっていた。いいから早く宣言してくれ。 「全く予想できなかったイレギュラー因子。それが、貴方。 ここから先は憶測であるが、涼宮ハルヒは貴方を服従させたいと思っていた。 それは最初精神的なものだけであったが、肉体的にも服従させたいと思った。」 「それでハルヒは男に、俺は女に・・・か・・・ハハ」 「貴方に男性器と女性器が複合したのは・・・上手く言語化できないけど、聞いて欲しい 涼宮ハルヒには貴方を服従させたい願望と、貴方に服従させられたい願望があった。 それが強く反映された結果、貴方は両性具有体となった。」 そうかそうか、ハルヒに理性に勝る性欲があったとは・・・驚天動地だ。 「今日は普通に過ごせるようにしておく。安心して欲しい。 ただ、放課後、私の家に来て。今後のことを考えなければならない」 そして、放課後、羞恥心と焦燥感をたっぷり味わって学校を終え、長門の家に行ったらこれだ。 問題は古泉も長門の部屋に居たってことだ。 「お疲れ様です、大変でしたね。まあ、いい経験じゃないですか」 いつもの笑顔がそこにあることに頭痛が増した。先回りをするな。 「何がいいんだ!最悪だろう、ふた…っ両性具有なんて… っていうかちょっと待て!何でお前が俺の腕を縛る!そして服を脱がせるな!」 あっという間、とはこのことだろう。機関の訓練の賜物ですよ、と言っている古泉を尻目に 俺は長門に助けを求めた。そして冒頭の流れに繋がる。 「彼・・・今は彼女。には貴方の拘束を頼んだだけ。 服を脱がせるという指示はしていないが・・感度も上がっている。問題は無い」 問題無いわけが無いだろう。現に俺には問題だらけだ! そんな口論をしているうちに長門の手によって弄られた息子は順調に成長を続けていた。 気持ちよくなって本来の目的を忘れそうだ。誰か助けてくれ。 あれ、長門は助けてくれてるんだっけか?頭の中がゴチャゴチャしてきた・・・ 長門の指はゴツゴツとまでいかない、細い指だったが間違いなく、男の指だった。 自分以外の、しかも昨日までは女だったやつに、息子をしごかれる日が来ると誰が予想できただろうか? しかも古泉は服を脱がせるのを諦めたのか中途半端に俺の制服を脱がせたまま胸を弄っていた。 正直に言おう、気持ちがいい。 「急激に海綿体に血液が集まってきている。質量も」 わああああ!状況を説明しないでくれ長門!いや長門様! 「ちょっ・・・ほんと・・・やめて・・・くっ・・・れ・・・も、無理」 「これはこれは・・・少々早すぎやしませんか?」 いやいやいや、早いとか言うな古泉。胸と息子を同時に攻められたら結構クるぞ。 「無理は無い。通常の男性の感度に女性の感度が加わっている。 原理は不明。でもこれは事実。」 俺の先走りでぬるぬるのそれを扱きながら長門は説明をした。 「男性器の機能はそのままのよう。ただし射精まで観察する。」 絶望とはこのことか。 「やだっ・・・こっち見ん…っ!扱くなっ…やめっ…うああぁっ」 抵抗虚しく、二人に見られながら俺は達した。 射精後、俺は脱力して古泉にもたれかかっていた。これで終わり…でいいんだよな? 自分で慰めた時以上に気だるかったが、なんとか体を起こした。 「う…これ、腕の解いてくれ…」 「まだ終わりじゃない。女性器を確かめていない。」 長門の言っていることを理解するまでに時間がかかった。 女性器を・・・確認?女性器ってあれだよな、入れるところ? 「・・・う、嘘だろ?」 「嘘ではない、この女性器が機能しているか確認しなければならない」 そう言いながら長門は俺の息子の下にある…なんつーか、その、娘に指を進めてきたが、 長門はすぐに突っ込むほど無作法な事はしなかった。 その分焦らすような動きで割れ目をなぞられた。それだけでも快感は大きかった。 「やめ…っろ!!」 抵抗しようにも腕は縛られているし、足も押さえられていてどうしようもないのは解っていた。 そこに追い討ちをかけるように古泉が息子のほうを触ってきた。 「おやおや、前がもう勃ってきてますよ?」 「やっやだっ…さっわんなぁああ!」 俺を抱えている古泉に、人差し指で鈴口から付け根までをなぞられる。 女古泉の白魚のような指でなでられると、視覚的にも感覚的にも効果は抜群だ。 元の世界ではそんな体験無かったからな。感じない方が無理だろう。 「すごい・・・硬いですね・・・もし・・・入れたくなったら言って下さいね。僕の方は準備万端ですよ」 熱っぽく言う古泉に虫唾が走った。まだまだ俺の理性は捨てたもんじゃないな。 そういえば途中から俺を触っている古泉の手は片方だけだった…準備万端ってそういうことか… 「んなこと思っ・・・っひあぁああああぁっ!!!」 反論をしようとした途端長門の指が入ってきた。なんなんだ、お前らグルなのか。 「やぁっ!!な、ながっ…とぉ…やめて!抜いっ…抜いてくっ…れ!!!」 自分の嬌声が恥ずかしい。元の声じゃないだけましだが、自分で出している声に変わりはない。 既にかなり濡れていた所に指を出し入れする長門を制止しようと試みる 「も、ホンと・・・に無理!!指…抜いて…お、お願い…っ」 懇願が効いたのか、長門の指の動きが止まり、ちゅという音で指が引き抜かれる。 古泉の動きも止まった。少し余裕の出てきた俺は二人をたしなめようとした。 「はぁ はっ…も、もういいだろう?いい加減、腕…」 「駄目ですよ。ねえ、長門さん?」 「彼女の言うとおり。女性器の機能はこれだけでは測れない」 絶望だ。流石の俺も気付いた。っていうか気付かされた。 長門君の長門君が大きくなっているんだ、そりゃあ、気付かないわけがないだろう? 「っど…どうしてもか…」 「情報統合思念体の意思は絶対」 「だそうです。流石の僕もこればっかりは手出しできません。」 「っ…!!……はぁ…解った。観念する。」 俺が随分あっさり抵抗を止めたものだから二人の動きも止まった。 古泉との体格差、それに加え男の長門だ、この二人を相手に抵抗してたら体が持たない。 性別が変わっていようが、普通認定された俺が情報統合思念体とやらに勝てる気がしない。 それにここはハルヒの力による世界だろう? 飲み会で酔ってやらかした事は「いやぁ、酒入ってたからさ~」と言う言葉でなんか許されてしまう。 それと同じだ。もし明日目覚めていつもの世界に戻っていて、この二人が何か言って来たらこう言えばいい んだ。 「いやぁ、ハルヒが望んだ事だからさ~」これで決まりだ。出来れば記憶は消しておいてほしいね。 そうと決まれば今を楽しめ、若者。イケメンと美少女と3Pなんてまたと無いぞ、多分。 「っはぁ・・・とりあえずこの腕のやつを解いてくれ。逃げたりしねーよ」 「・・・わかった、もう彼女に逃げる意思は無い。解いても問題は無い。」 「了解しました。じゃあ服も脱ぎますか?」 無表情だが興奮しているらしい長門と笑顔の古泉・・・自分の事で一杯一杯で気付かなかったが二人ともヤル気満々だ。 ちょっと早まったかもしれない。 「いや、服は・・・このままで。」 着衣プレイが萌えるとか言うわけでは無く、自分の局部を見たくなかっただけだ。 息子の方は元気に顔を覗かせているが、通常世界で見慣れてるからな、抵抗は無い。 「じゃあ」 そういって長門は自分のモノを制服のズボンから取り出し、古泉は俺に跨った。 「ちょ、ちょっと待て、一気にやるのか!?」 予想はしてたがちょっと、この光景は正直、引く。 「長く楽しみたいのでしたら僕は後からにしますよ?」 それもそうだな。さっさと終わらせてしまおう。 そう思って体の力を抜いた所を狙って、予告無しに長門が挿れてきた。 「っぐぁ・・!!!!!何か、いえ・・・うあぁ・・・」 「限界。我慢して欲しい。」 「ひっ・・・ぐ・・・ま、まだ動かさないで・・・っくれ!!!」 「・・・わかった」 「早いですね、長門さん。僕も楽しむとしますね。」 「あ、や、やぁああ・・・!!!」 古泉が跨ったまま腰を沈めた。準備万端は伊達じゃなかったようだ。 「っふ・・・キョンくんのが・・・ナカに・・・はぁっ、気持ちいぃ・・・」 お前もそんなに動くな!!また早いとか言われたくないんだよ!俺は! 「・・・・・もう動かしてもいい?」 「っは・・・ながっ・・・ごめ、もう大丈夫っ・・・!!」 「ありがとう」 そう言って長門が腰を動かすとグチュグチュと水音がして、聴覚からも犯されている気分だ。 古泉と繋がっている所からも同じようが音がして、物凄く興奮する。 正直、二箇所で他人を感じるのは凄く気持ちよかった。 長門には奥までしっかり突かれて、古泉の奥を突いて、ほんともうどうにかなりそうだ。 「はひっぁ!!あっ・・・あぁああ!!ひっぐ、うぐ・・・はあああ!!!」 「凄っ・・・いいです、ね・・・そそりますね、その、っかお・・・!」 「やぁ・・・み、見ないでっ・・・!!」 馬鹿みたいに喘いでいたから、古泉の顔がすぐ近くまで来ていたことに気付かなかった。 「泣いちゃうほど、気持ちが良いんですねぇっ・・・」 いつの間にか頬を伝っていた涙を舐められ、そのまま口内も犯された。 やられたい放題だが、古泉の舌は凄く気持ちがいいし、俺もそのまま舌を絡め合わせた。 それを古泉の後ろから見ていた長門がつまらなさそうに 「・・・・・・・・動きづらい」と、呟いた途端一回大きくナカを突かれた後に ずるりと抜かれ、カリで入り口を引っかかれた衝撃で、俺は二回目の絶頂を古泉のナカで迎えた 「っぐ・・・はぁ!!!あ・・・あぁあぁああああっ!?」 「っひあぁ!!キョンくんのっが、ナカでっ・・・ビクビクって!!!っひぅっ」 状況が読めなかった。 なんで俺は古泉が正面にいて、長門が後ろにいるんだ?いつの間に? 「体位を変えただけ。また挿れる。」 そうですか。えーと・・・古泉が下・・・正常位で、長門がバック?これ、なんて言うんだっけと 自分の性に対する知識を確認してる間もなく、後ろから突かれ、胸も揉まれる。 「っく・・・!!あぁ、はぁ・・・はっ」 さっきの余韻が残ったままの後ろからの行為に戸惑いを隠せなかったが 長門の動きはさっきより激しくなく、丁度いい動きばかりで、胸をいじる手付きも気持ちよかった。 「っふ、う・・・あ、はあっ!!気持ち、いいっ!!も・・・もっとぉ!!」 「はぁ・・・長門さんにばっかり集中しないで、僕も、もっと気持ちよくして下さいね」 「う・・・うぁ、うん、ごめっ」 そう言われても動きは制限されているし、上手く体を動かせなかったので、意識を下半身に集中させ 長門の動きに合わせて古泉を攻めることにした。 「んっ、はぁ!あ、そこっ気持ちいい!!もっと下さいいぃ!!」 「あっあっ!!はぁ・・・すげっお前んナカ、ぐちゅぐちゅ・・・してるっ!!」 「貴方のナカも、負けていない」 「んうぅっ・・・」 自分の置かれてる状況を甘んじて受け入れると、結構悪くない。 悪くないどころか、最高だと思えてきた。 流石に俺も疲れてきていたが与えられる快楽には素直で、最初の抵抗はどこへやら 羞恥心の欠片も無い喘ぎ声ばかりあげていた。 そういえば、と限界が近い俺は伝えなければいけない事を朦朧としかけている頭で思い出した 「あっあ・・・長門っ!!あのっ・・・戻る前にっ俺の、きお・・・記憶っは、消してっ・・・くれ!!」 「・・・了解。そろそろ射精をする。」 「あっはぁああああああ!!!!!」 「ひあぁっ!!!!だめっ・・・僕もっ!!あぁああああ!!!!」 ――そして長門は俺のナカで、俺は古泉のナカで絶頂を向かえた。 後の処理は長門が上手くやってくれて、記憶も消してくれるだろう。 全く、ハルヒにこんな願望があったとは驚きだね。その辺はしっかり記憶から抹消しといてくれ。 俺も平和な高校生生活を満喫したいからな。 そう思いながら俺は意識を手放した。 ・ ・ ・ 「ありがとうございます、長門さん。 それにしても上手くいきましたね、長門さんが情報操作した世界だと気付かれずに事が運びました」 「あれ以来、小規模な情報操作は簡単だと気付いた。私も楽しかった。」 「くれぐれもご内密に。よければまたご一緒させて下さい。」 「・・・私はたまに情報操作をしながら、彼の性的欲求を解消していた。 それが古泉一樹にばれたのは不覚としか言いようがない。」 「ハハッ、機関の情報網はすごいでしょう。そのおかげで僕は彼の淫らな姿を拝める。 素敵なギブアンドテイクですよねぇ。」 「・・・・・・・・・・いいアイデアを貰えたから、構わない。」 「彼の記憶はどうするんですか?」 「このことに関する記憶や思考は全て消去する。今までもそうしてきた。」 「なるほど・・・僕の記憶は消さないんですよね?長門さんならば僕にばれた時点でそうしていたはずですから」 「そう。たまには罪悪感を背負う人間を増やしてもいいと思った。」 「ハハ、罪悪感ですか。確かに一人で抱えるには大きいですねぇ、この罪悪感は。」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1558.html
SOS団の会議が行われた・・・。 ハルヒ「ね?面白そうじゃない?!」 キョン「おお!ハルヒもいいもんみつけたじゃないか!」 ハルヒ「わ、私にいわないでよ!ニュースサイトでみたんだもんっ!」 古泉「いえいえ・・、こんな面白いネットゲームを教えてくれたのは ハルヒさんです。ありがとうございます。」 ハルヒ「んもう、てれるじゃない・・・。」 SOS団はチャットロワイヤルというゲームを始めた チャットロワイヤルとは、チャットをしながら バトルを楽しむネットゲームだ。 チャットのように普通の発言をすると、 その発言のダメージが自動で作られ そのダメージを相手に与える。 今、ネットでもっとも有名な チャットロワイヤルにSOS団はきたのだ。 なお、このチャットロワイヤルは チームバトル式になっている。 「VIP」 ・ブーンするお ・ケツ穴ぷーん まずはこのチームと 「SOS団」 ・ハルヒ団長 ・キョン ・みくる ・古泉 ・長門 SOS団が対決になった・ ハルヒ「出場させるチーム・・・・。」 古泉「ハハハハハ・・・。面白いですね・・・僕がいきます」 みくる「わ、私もいきます!!」 そう、このバトルは 2VS2なのだ。出場しないものは応援となるのである。 古泉「いきますよ」 ケツ穴ぷーん:ってか夏厨だろ?キモスwwww ケツ穴ぷーん は腰を振っている!! 古泉 の攻撃! 古泉:ほう、これはドラクエみたいですね。 古泉 はニコニコしながら顔を蹴った! みくる:そうですねー。 みくる はチェーンソーをケツ穴ぷーんの太ももに切りつけた!! ケツ穴ぷーん:痛スwwwwっをっを みくる に包丁を刺した!!!! みくるは死亡した.... 第2ラウンド スタート。 古泉:第2ラウンド・・・あぁ、ログ掃除ですか。 古泉はケツ穴ぷーん の髪の毛を掴み 壁にたたきつけた! ケツ穴ぷーん は倒れた... 第3ラウンド スタート VIP:OKOK VIPはこけた! 武器「バルカン」投下 古泉:武器ゲット方法がわかりませんが・・・。 針でVIPを刺した!!!!!!!! VIP:バルカン支給 バルカンで小泉を撃った!!!2発HIT 古泉、ピンチだ! 古泉:ややこしいですね・・・。 親指を目に突き入れた!!!! VIPは死んだ.... ハルヒ「あ、や、やるじゃないの古泉!!!!」 古泉「次は、ハルヒさんですよ。」 ハルヒ「わかったわぁ!」 チェーンソー:うはwwよろ。 チェーンソーを切りつけた!!!!!しかし、よけられた!! ハルヒ:チェーンソー・・・・購入したのね。ネトゲに金払うなんて! ビンタをした!! なかなかのダメージ! チェーンソー:そぉおおい!! ハルヒの首に直撃!なまなましい血が舞った!!!! 古泉:弱いですねぇ・・・私は最強ですよ・・・? キョン:チーム作成はフリーだな? ハルヒ:え、ええ・・・。 古泉:最強小泉チームを作成しましたよ キョン:悪いなハルヒ、そっちへいく。 ハルヒ:・・・・・・敵。まずは私を倒しなさい!! -みくる&長門はすでに帰っていた- 古泉:ハァアアアア!!!!!! 腹をかいている! ハルヒ:馬鹿ね・・・・クズとは違うのよ! 肩を強く掴み、パンチを顔にした!! 吐血! 第2ラウンド スタート キョン:説明ページ読み終わったぞ。 【W攻撃】 キョンはハルヒを行動不能にした! ハルヒ:?!呪文?!特殊・・・・技?! 動けない。 古泉:私も読み終わりましたよwwww 【蹴り】 腹に蹴りをいれた!ハルヒ はつばを古泉の顔につけた! 古泉:きたないですね【殴る】 ハルヒ にクリニティカルヒット! 古泉:ハァ・・・これだからネカマは【刺し】 コンバットナイフで刺した!!!! ハルヒ:う・・・・わ・・・・あ・・ひど・・・・ つばと血をたらしながらもがいている! ハルヒ:つけ・・てもない・・・・・・の・・に・・・・・沈黙マーク・・・が・・・・ 鼻水を舌にたらしている。。。。(とどめコマンド可能) キョン:しね!【とどめ】 蹴りを目に突き飛ばした!! ハルヒ:ヒグァァ! ハルヒ は死んだ..... ハルヒ:・・・・・・・・。 古泉:ははは、すみません・・・。ハルヒさんがかわいかったもので。 ハルヒ:もう、古泉君ったら・・。あれ、キョンは・・・ キョン:悪かったなハルヒ、あ、帰りカラオケいくか? ハルヒ:いいわねいいわね! 古泉:じゃぁみくるさんたちも呼びましょう!! このとき、ハルヒの憂鬱は溶けた。 こうしてハルヒは、SOS団と共に 幸せな日常を過ごしたのであった。 なお、この戦いは7月27日 16時23分に行われたものである。 ────野球部・ 宇葉www・尾毛ww(笑)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2555.html
屋上に出てきてからどれくらい経っただろう。 もうすでにかなり経った気がしないでもないが、こういうときは想像以上に時間が長く感じてしまうものだ。 それにしても一体何が起こっているんだ? 俺がもう一人いる!?どういうことだ?どこからか現れたのか? 一番ありえるのは未来から来たということだろう。となると朝比奈さんがらみか? 大きい朝比奈さんか? とにかく少しばかりややこしい事態になっているようだな。 と、そこで屋上のドアが開かれた。 「古泉、……と俺か」 『涼宮ハルヒの交流』 ―第二章― 古泉ともう一人の『俺』が屋上に出てくる。 「おや、あまり驚いていないようですね」 「さっき声が聞こえたからな。そうだろうと思っていた。もちろん最初は慌てたが」 俺は『俺』の方を向き、古泉に尋ねる。 「で、そっちの『俺』は未来から来たのか?」 「な、それはお前の方じゃないのか?」 俺の質問に『俺』が声を荒げる。 「やはりそうですか……」 古泉が呟くように口を開いた。 「古泉、どういうことだ?」 「僕も初めはそう思いました。あなたが二人いるということは、どちらかが未来から来たのだろう。 だとすると、どちらかはあなたがこの時間に二人いるということを当然知っているはず、と。 しかし、あなたとは部室に向かう際に、こちらのあなたとは今ここに来る際に少し話をしましたが、 どちらのあなたにもそのような様子は見られませんでしたから、そういうこともあるかとは思いました。 いちおう確認しますが、あなたも違うのですよね?」 もちろん俺も未来から来た、なんてことはない。 「つまり俺もそっちの『俺』も未来から来たというわけではない、ということか」 「おそらくは。ちなみに今日がいつかはご存知ですか?」 「今日?ご存知も何もG.W明けの憂鬱な月曜日だろ。……まさか、違うのか!?」 「いえ、そのとおりです。ということは未来から無理矢理に連れてこられたということもないようですね」 静観していた『俺』が口を挟む。 「そっちの俺が嘘を吐いている、ということはなさそうか?」 「おそらくそれはないかと。あなたも嘘は苦手でしょう?僕なら簡単に見破れます」 「……なんか複雑だな」 『俺』は苦笑いを浮かべている。 「じゃあどういうことなんだろうな。古泉はどう思うんだ?」 古泉はお手上げといったポーズをとる。 「正直言ってさっぱりです。ひょっとすると涼宮さんの力が関係しているのかも、という程度です」 「どういうことだ?ハルヒの力が働けばわかるんじゃないのか?」 「厳密に言いますと、涼宮さんの力は無視できるレベルにおいては常に働いている、とも言えます。 そうですね、例えて言うなら我々がまばたきをするようなものです。 まばたきの際には無意識に一瞬目をつぶりますが、普通はそれによって何かが起こることはありません。 そのレベルで涼宮さんは無意識的にいつも力を使っていると言える、ということです」 「それはまずいことなのか?」 「いえ、それによって何かに影響が出たことは、我々の知る限り今までは一度もありません」 「なら問題ないんじゃないか?」 「あくまでも『我々が知る限り』『今まで』ということです」 「なるほどな。知らない範囲で起きている可能性は完全に否定はできないということか」 「そういうことです。僕としてはまずありえないと思うのですが……、他には思い付きません」 そういって残念そうに笑う。 「ちなみにそれだとお前はどう思うんだ?」 『俺』が古泉に尋ねる。 「何らかの理由によって、あなたが二人いて欲しい、と涼宮さんが思ったのではないでしょうか」 「さっき俺が役立たずと思いっきり罵られていたからか?」 『俺』はひきつったような笑みを浮かべている。 「二人で一人前ということですか。それはまた面白いですね」 いや、面白くないし、全く笑えん。が、 「ということは俺が一人前になれば全て解決ということだな」 そのとき後ろから突然もう一人声が加わる。 「そうではない」 「「な、長門!?」」 俺と『俺』は声を合わせて振り返る。 「ああ、長門さんには後で屋上に来てもらえるよう頼んでおきました。どうにも僕の手に余りそうだったので。 ところで、違うとはどういうことでしょう?仮定が間違いということでしょうか?」 「そういう意味ではない」 「と、言いますと?」 「それで解決とは言えない」 「どういうことでしょう?……長門さんの考えを聞かせてもらえますか?」 と、手で長門の発言を促す。 「最初に言っておく。これは情報統合思念体によって起こされた現象ではない。情報統合思念体は無関係。 そして、ここにいる二人は異時間同位体ではない。つまり別の人間」 「つまり宇宙人も未来人も関係していないということですか……。なるほど」 「以上のことからこれは涼宮ハルヒによって引き起こされたものと推測できる。ただし断定はできない。 その理由は我々にも涼宮ハルヒの力の発現が確認できなかったから」 つまり消去方でハルヒの力というわけか。 「そう」 古泉は言いづらそうに長門に尋ねる。 「ところで……言い方が非常に難しいのですが。長門さんにはどちらが本来の彼かわかりますか? いえ、本来のというよりも……我々の知る彼、と言うべきでしょうか?」 「それはどっちが本物か、って意味か?」 『俺』がすぐに古泉に確認する。 「……すいません。乱暴な言い方をするとそうなります」 古泉が本当に申し訳なさそうな顔を浮かべたので、俺は慌ててフォローする。 「いや、謝ることはない。俺たちも気になるし。な?」 「ああ」 と、『俺』も頷く。 とは言ってみたものの正直言って気が気じゃない。 まさか、俺が偽者なんてことはないよな。長門が間違えることはないだろうし。頼むぜ、長門。 俺たち二人に交互に視線を合わせた後、 「どちらが本物かという意味においては判断ができない」 「どういうことでしょう?」 「我々が今まで共に過ごしてきた方を本物とする根拠がない」 「なるほど。我々がよく知るからといって、そちらの彼がが本物とは限らない、ということですか」 「そう」 「では、今まで一緒にいた彼がどちらかというのはわかるのでしょうか?」 「わかる。……今まで一年間我々と共に過ごしてきたのはあなた」 長門はそう言い『俺』の方に向き直る。 「――っ、えっ!?」 俺……じゃないのか? じゃあ、俺は? ……偽者? 偽者なのか? ハルヒの力で生まれた、偽者? 「ちょっ、ちょっと待ってくれよ!なんでだよ!」 もう何が何だかわからない。 そんな馬鹿な。 俺は昨日までもSOS団の一人として、みんなと過ごしてきたはずだ。 そして今日もさっきまで教室で授業を受けていた。クラスメイトとも会った。ハルヒとも話をした。 「落ち着いてください!別にあなたが偽者と言っているわけじゃありません」 「言ってるだろ!じゃあ俺はなんなんだよ。この記憶は嘘だっていうのかよ!どうなってんだよ!」 頭に血が上り、思わず古泉に詰め寄る。 「そ、それは……」 そのとき後ろから俺の手がギュッと握られる。 「落ち着いて。……お願い」 「な、……長門」 ハッと我に返る。 長門はじっと俺の目を見つめてくる。悲しいが、優しい目だ。 ……こんな長門の目を見たのは初めてだな。 初めて……か。 「す、すまん。古泉」 「いいえ。僕が変なことを聞いたせいです。本当にすいません」 古泉は本当に申し訳なさそうな様子だ。 別に古泉が悪いわけじゃないんだけどな。 「……いや、俺も知りたいと言ったわけだし。それに、大事なことだろ」 二人して黙り込んでしまったところに『俺』が申し訳なさそうに話を続ける。 「……長門、結局どうなっていてどうすればいいかわかるか?」 無神経なやつだな。と、少し思ったが、このままの空気は正直きつかったので実際には助かった。 まぁ、俺だしな。多少の無神経は仕方がないか。 「わからない。可能性としては古泉一樹の言ったこともあり得る」 「ならとりあえず何らかの方法でハルヒを満足させてやれば問題はないんじゃないか?」 「問題はある」 「なんでだ?この事態をおさめるにはそれしかないと思うんだが」 「違いますよ。……この事態をおさめることに少しばかり問題があるのです」 古泉が慌てて口を挟む。 どういうことだ? 少しばかり考えごとをしていたら話に全くついていけなくなっちまったぜ。参ったな。 とはいっても『俺』もついていけてないみたいだがな。 「何の問題があるんだ?」 再び尋ねている。古泉は長門と顔を見合わせた後、ゆっくりと話す。 「これが解決すると、彼が……消える可能性があります」 「どういう意味だ?」 「もし彼がどこかから来たのであればそこに帰るだけでしょうが、そうでないならば……」 「あっ!……」 『俺』の顔色が変わる。 そうだな。二人いてそれを一人に戻すということは俺が消えるってことになるか。 ……死ぬってことになるんだよな。 『俺』が慌てて俺の方を向いて言う。 「……すまん」 「いや、気にするな」 また沈黙が訪れる。 「もちろんそうでないという可能性もあります。 例えばあなたが涼宮さんの力によってパラレルワールドからやって来たというのもあり得ることですし、 逆に涼宮さんの力によってあなた以外の全てが創り変えられたということも無いとは言いきれません」 可能性か。確かにそうなんだろうが。 「でも、お前はその可能性は低いと思うんだよな?」 「……すいません」 「いや、気にするな。お前が謝ることじゃない」 とりあえずこれからどうするかが問題だな。 「古泉、なら俺はどうしたらいい?」 「そうですね。ずっとこのままでいるというわけにはいかないでしょうが、少し様子を見ましょう。 あなたにも考える時間が要りようかと」 そうだな。まだ頭の中がごちゃごちゃしてよくわからん。 「とりあえず、ゆっくりと息をつけて考えたい」 このまま『俺』と顔を合わせてたんじゃ、なんとなく落ち着かん。 家に帰ってからじっくりと考えることにするか。 ……ん、家? 「あなたは家には帰れない。私のところに」 確かに俺が二人帰ると家の中がとんでもないことになってしまうな。 「そうだな、そうするしかないか」 「そう」 長門は微かに頷く。 「けどいいのか?迷惑じゃないか?」 「ない。他に行きたい所でも?」 「いや、そういうわけじゃない。もちろんありがたい」 「なら問題ない」 結局また長門の世話になっちまうみたいだな。 「では今日のところはこのくらいにしておきますか。僕もこれからのことを考えておきます」 「ああ、頼むぜ。何かわかったらよろしくな」 「帰る」 と言って歩き出した長門に従いその場を後にする。 「俺もできるだけのことはしたいと思う。できることがあれば言ってくれ」 『俺』が後ろから声をかける。 「色々とめんどくさそうなことになってすまんな。何かあれば言うことにするさ」 ◇◇◇◇◇ 第三章へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5478.html
(これでも三訂版) ・サイレントヒルとのクロスオーバー。グロ描写注意。 「これ、返す」 「おう、やったのか」 有希がキョンに何かのゲームソフトを渡すのが見えた。有希もゲームをするのね、ちょっと意外。どんなのかしら。 「それ、何?」 「ああ、零だよ」 キョンがソフトをこちらに見せた。いかにもなパッケージをしているところからするとホラーゲームみたい。あたしが好きなジャンルではないみたい。 「お前はこういうのが好きじゃないみたいだな」 キョンがそう言ったのでびっくりした。 「な、なんで分かったのよ」 「期待して損した、みたいな表情をしてたからな」 そんな表情してたのかしら……。こいつ時々鋭いから困ったものだわ。 「で、有希、それをやってみてどうだった?」 「人間の想像力は……恐ろしい」 いつもより小さな声でそういうと俯いてしまった。 「どうしたのよ有希。まさか、怖かったの?」 「違う」 即答だった。必死さを感じたのは気のせいかしら。 「そんなことはない。決してトイレに行くことが出来なくなったり、布団に潜ったまま翌朝まで身動き出来なくなった訳ではない」 有希……全部言ってどうするの……。 「貸しておいて何だが……スマン」 「いい」 やがて古泉君やみくるちゃんがやってきた。古泉君がそのソフトの箱を見るなり言った。 「まさか貴方がそのような分野のを持っているとは思いませんでした」 「興味本位でな。あの怖いCMがちょっときになってな」 すぐにどんなのか判ったってことは古泉君もやったことあるのかしら。ちょっと内容が気になるけど……怖いのよね。 「そんなの怖くてできないです……」 そう呟いたみくるちゃんに同意せざるを得ないわ。 「キョンってどんなジャンルのゲームをするの? まさかそんなのしかないとか言わないでしょうね」 「さすがにそれはねーよ。妹もいるんだしな、パーティゲームとか大衆向けのももそれなりにあるぞ」 「ふーん、じゃあ週末はキョンの家でゲーム大会ね」 「え、ん、まあいいが」 「じゃ決定ね。ということだからみんなよろしく!」 その後、有希は読者を再開していたし、古泉君はキョンとチェスを始め、みくるちゃんは紅茶を選んでいた。 あたしは特に何をするということもなく、適当に検索して開いたページ眺めてた。 さっきの零とかいうソフトについて調べないのかって? 冗談じゃないわ、あんなアブノーマルなのあたしには向いてないもの。 「あ、あれ……?」 気が付くと、あたしは真っ暗な駅のホームに立っていた。 何で? さっきまで部室にいた筈なのに。 慌てて辺りを見回すけれど、ホームどころか駅の周辺からも人の気配が全然しない。 「どうなってるのかしら」 ホ-ムを改めて見回してみる。見たくなかったけれど。 蛍光灯だけが照らしている構内は随分と汚くて、柱なんて赤錆でボロボロになっている。地面のコンクリートが赤いのもそのせいよ。 そのせいよね……。 ここはどこの駅なのかしら。全く見覚えがない。外に明かりはなく、この駅以外は永遠に続きそうな真っ暗闇しかない。 一体何が起こったのかさっぱり分からない。あたしは一歩も動けずに 「いやああああああああああああああああああああ!!!」 その突然の叫び声にあまりに驚いたあたしは、一瞬呼吸を忘れてしまった。 「何!? 何なの!? さっきの悲鳴は何なのよ!?」 パニック寸前のあたしは一刻も早くここから出ようと、改札口へ走った。自分の荒い息遣いと壁に反響した足音だけが聞こえる。 周りを見ている余裕なんてなかった。後で思うと、見なくて正解だったかもね。 恐怖からの逃避を図ったその先で、あたしは地獄を見た。心臓が縮み上がった。全身から血の気が引く音がした。 改札口の辺りは血痕だらけになっていた。床も壁も天井も……、一体何をすればこんなに飛び散るのだろう……。 そして改札機のそばには何かが 「……みくるちゃん!?」 どうして? どうしてこんなことになってるの!? 血まみれになって倒れているみくるちゃんはあたしの声に気付いてこっちを見た。 「みくるちゃん! 何があったの!? しっかりして!」 「涼宮さん…………逃げて下さい…………。この世界は…………もう…………」 「何言ってるの!? みくるちゃん! 」 「……じ………く…………」 「 !」 「………………………」 もうみくるちゃんが何を言ったか聞き取れなかったし、自分が何を言ったかさえ覚えていなかった。 「 !」 「」 「」 「」 「」 「 「 「 「おい、ハルヒ? ハルヒ?」 あたしは気付くと、机に突っ伏して寝ていたみたいだった。額は汗でびっしょりになっていた。 ゆ、夢? そうよね、あんなこと現実にはあり得ないもの…………。 「どんな夢を見てたんだ? 随分と苦しそうだったが、大丈夫か?」 キョンはまだ呼吸の整っていないあたしを心配しているみたい。 視線を移すと、心配そうにこちらを覗くみくるちゃんが見えた。ちゃんとメイド服を来てるし、勿論血なんてついてない。 あたしは立ち上がると、何か話しているキョンを無視してふらふらとした足取りでみくるちゃんに近付いた。みくるちゃんは少し驚いた表情をしていたけどね。そんなのどうだっていいわ、さっきのが夢だっていう証拠が欲しかったから。 「みくるちゃん、何も起こってない……よね……?」 「え? は、はい、いつも通りですよ」 あたしはみくるちゃんに抱きついて泣いていた。 「す、涼宮さん?」 「ちょっと……怖い夢を見ちゃったから……。うん、大丈夫よ……」 みくるちゃんは、優しくあたしを撫でてくれた。ちょっと恥ずかしかったから、悪夢を見たのをキョンのせいにして解散した。 家に帰ってからは、一晩中なんだか怖かった。それはもうキョンから借りたゲームの所為で動けなくなった有希といい勝負だったかもしれない。 けど、何も起こらなかったし、あの夢も見なかった。 でも、翌朝にそれは起こった。 あの悪夢はただの夢だったことにほっとして、何時ものように学校に向かっていたあたしは、突然目眩に襲われて倒れた。 気がつくと、ほほにアスファルトの感触がある。その場に倒れたままだった。 「ったく……誰も助けてくれないなんて薄情な……」 ここは一通りの多い通学路なのに、人の気配が一切なかった。 そして辺りは真っ白な霧で覆われていて、5メートル先も見えない状態だった。 「え? なに……これ……」 何より不安を誘うのが、全くと言っていいほどに音が無いことだった。 音がしないなんて雪が降った日みたいだけど、今は凄く不気味に感じる。 無響室に入れられた人は不安感を抱くとかいう実験について聞いたことがあるけど、今のあたしはそれに近い環境下におかれているのかもしれない。 ここは毎日通る道なのに、どう進めばいいか分からない。電柱とか、特徴がある家とか、そういった目印を探しつつ学校へ向かった。もう家を出てしまった以上、学校に行った方が安全だと思ったから。 そうして何とか進んでいた時、私は不意に足を止めた。 白い霧の中に、ぼんやりと影が見える。その形からして、路上に誰か倒れているようにしか見えなかった。 あの時のよく似た状況の記憶が頭を埋め尽くす。 嫌、見たくない…………。 それでも、あたしには前に進むしかなかった。 重い足取りでも、確実にそれに近づいていた。 やがて霧の中から見えてきたのは、血溜まりに倒れているキョンだった。 「……え…?」 今回は夢じゃない。体を流れる血が冷たく感じた。 「嘘……でしょ……?」 キョンを揺さぶっても、全然反応しない。手も首も、だらんと重力に負けたまま……。 「嘘って……、言ってよ……ねえ!」 あたしの両手が真っ赤になっていた。キョンはおびただしい量の血を流して、温かさを失っていた。 「どうすればいいの……!」 救急車を呼ぼうと思い立って、慌てて震える手で携帯を取り出した。 「……どうして?」 圏外という赤い二文字が画面に表示されていた。助けは来ない、あたしにも助けられない。 キョンは死んでしまった? これはみくるちゃんの時と同じ「夢」……よね……? でも、このべっとりとした嫌な感触や、鉄の臭いは…… ………… ………… あたしは狂ったように泣き叫んだ。声が裏返り、しわがれても構わずに叫び続けた。 「…………!」 あたしは泣くのをやめた。 足音が聞こえた。しかもそれが段々と近づいていた。 「だ、誰……誰なの!?」 あたしは虚空に向かって叫んだ。虚勢でも張っていないとおかしくなってしまいそうだった。 すると、返事が聞こえた。 「涼宮さん!?」 あの声は、古泉君! 良かった……。 霧の中から姿を現したのは間違いなく古泉君だった。 「涼宮さ…………」 古泉君はキョンの亡骸を見て言葉を失った。 「これは……」 「あたしが来た時には、もう……」 「朝比奈さんに続いてまさか彼が……」 その言葉にはっとした。 「みくるちゃんも!? どういうことなの?」 「朝比奈さんは、先日、駅の改札口で」 「何ですって!?」 古泉君の話していた内容は、あの時の夢と全く同じだった。 あたしは頭を抱えた。ひどく混乱していた。信じたくないことばかりがぐちゃぐちゃになって頭の中を掻きまわしていた。 どういうことなの? あれは夢じゃなかったの? 「このままでは、この世界は……終わってしまいます」 それは、みくるちゃんと同じ台詞だった。 『この世界は…………もう…………』 「古泉君、この世界って何なの? 何でみんな殺されたの? この世界はどうなっちゃうの!?」 あたしが古泉君に掴みかかっていたその時、後ろから声がした。 「あら、揃ったのね」 振り向いたけど霧しか見えない。 「誰よ!」 「あら、名前なんて言わなくても分かるでしょ?」 霧の中から、うっすらと影が見えてきた。 「彼を殺したのはあたしよ。話を面白くするには良い演出でしょ?」 笑っているような口調だった。 「ふざけるな!」 あたしはそいつに向かって怒鳴った。 「ふざけてはないったら。彼もあの子も必要な犠牲なんだから」 まさか、みくるちゃんもこいつが……。そう判断した瞬間、自分自身でも驚く程の激しい憎しみという感情を抱いていた。 「良いわねぇ……、良いわその表情……。あたしを殺したいの? 出来るかしら?」 あたしは呼吸が荒くなっているのが分かっていたけれど、それを抑えることはしなかった。 「悔しいのなら、学校で待ってるからいらっしゃい。面白いものを見せてあげるから」 そう言って、そいつは霧の中に消えた。 キョン…… そいつが消えた頃にあたしはようやく落ち着いた。古泉君が霧で真っ白の世界を見回しながら呟いた。 「僕自身も、裏世界にいるのは初めてなんですが……。この霧の世界……、まさにサイレントヒルですね」 「それって……あたし達はホラーゲームの世界に放り込まれたってこと? 冗談じゃないわ!」 本当に冗談じゃなかった。ホラーの世界が現実になったら……とてもじゃないけど、主人公みたいに生き残れる自信なんて……。 「しかし、このままでは何も進展しません。ここで敵の襲撃を受ければ助かる見込みはありません」 あたしは決意した。キョンの仇を取らなきゃ。 「……分かったわ、あたし達が主人公になってやろうじゃないの。主人公は不死身なんだからね」 あたしは別の世界の涼宮ハルヒだと説明すると、古泉君はあっさりと理解してくれた。 なんで不思議に思わないのだろう……。 古泉君によると、この世界のあたしは数日前に失踪してしまっている。それ以来、裏世界と呼ばれるおぞましい空間が発生し、そこで殺人事件が起こっているらしい。 その犠牲者はキョンやみくるちゃんを含めて20人を超え……。 そして、今いるのがその裏世界。惨劇の舞台に、あたし達はいる。 「つまり、狙われてるってこと?」 そう思いたくなかったけど、そう思わざるを得なかった。 あたし達はあの女のいる学校へ向かうことにした。 何かが襲ってこないか不安だったけども、静寂を破るようなことは起こらなかった。 どれくらいの時間が掛ったのだろう、霧の中を歩いて、ようやく学校に着いた。 でも、古泉君は入るのを躊躇っていた。 「どうしたの?」 「裏世界の詳細をご存知ですか?」 「どんな世界なの?」 「その世界の建物の内部はとても凄惨なことになっています。最もおぞましいと言われる程だそうです。覚悟をしないと、精神的に参ってしまいます」 あたしは頷いて学校へと入った。 覚悟はしていたつもりだった。 でも、古泉君が言っていた通り、入った瞬間に食道がケイレンを起こした。 「ぅ…………」 あの時の駅より酷い、酷過ぎる。 「大丈夫ですか?」 何もかもが赤錆と血飛沫でどす黒い赤色になっていた。血の臭いがする……。この学校のあらゆる場所で殺し合いがあったような状態だった。 「ええ。なんとかね……」 蛍光灯は全部割れていて、外の霧が唯一の明かりになっていた。 「かなりの邪念を感じますが……、とりあえず、進みましょう」 「ええ、そうするしかないわね……」 昇降口 まず、自分の上靴の場所を調べる。 履き替えるつもりなんて勿論無い。血でこんなに汚いんだから、土足でも構わないだろうし。 二度と触りたくないくらいに汚い上履き以外は、変わった物は入っていなかった。 「おや、これは心強いですね」 古泉君が見つけたのは、ショットガンだった。弾も幾つか見つけたみたいだった。 古泉君は、弾をポケットに入れると、その一つを装填して構えた。手慣れたように見えたのはどうしてだろう。 「頼れる武器があると、やはり落ち着きます」 こんな物騒なものを手にして落ち着くなんておかしいけど、今は命の危険に晒されているのだから、古泉君が正しいと思う。 「この世界がゲームと同じなら、武器はいろいろと見つかる筈ですね」 なるほど、だから学校にそんなものが置いてあるのね。 あたしも何か役に立ちそうなアイテムはないかと見回すと、傘立てに傘に混じって何かが立ててあった。 手に取ると、日本刀だった。鞘に紐がついていたので、それを腰に巻いて結んだ。 「いいものを見つけたみたいですね」 ショットガンを持った古泉君が言った。 「僕も近接武器が欲しいですね。ショットガンには弾に限りがありますから。銃身で殴るには少々重たいですし」 ズズッ…… その時何かの音がした。 「おやおや、歓迎でも来たようですね」 勿論そのままの意味でないことは知ってる。敵でしょ。 廊下で何かが動いていた。 それが這ってこちらに来ている。だんだんとその姿がはっきりと見えてきた。 ゾンビというのかは分からないけど、人の形をした血まみれの気持ち悪い生き物が近付いていた。 「涼宮さん、下がって下さい」 「いえ、その必要はないわ……」 あたしは刀を鞘から引き抜いて、銀色に輝く刃を見つめた。 決心したんだもの、あたしはキョンの仇を討つまでは……いえ、討っても死ねない! 「弾はもしもの時の為にとっときなさい!」 あたしは目の前の敵に向かって走った。 あたしの姿を認めるとそいつは何やら呻いていたけれど、そんなの気にせずに素早く背後に周りこんで、これでもかという位に斬りつけた。 背中から血を噴き出してもがいていたけど、蹴りを一発お見舞いしたら動かなくなった。 「す、凄いですね涼宮さん」 古泉君の視線で、あたしは大量の返り血を浴びていた事に気付いた。それを見たから、古泉君は少し驚いたのだろう。 「この調子ならノーダメージでいけそうね」 「では、行きましょうか」 1F 薄暗い廊下を歩いて行く。目的地は分からないけど、学校のどこかにアイツはいるから順番に回っていけばいつか見つかるだろうし。 古泉君が腕を組んで壁とにらめっこをしていた。 「これは……困りました。ここには手洗い場があったはずなんですが」 確かに、ここにはトイレがあった筈なのに、真っ赤で気味の悪い壁しかない。 「どういうこと……?」 「特に仕掛けもないようですし、配置が変えられていると考えるのが一番かと」 配置が変えられているだけじゃなかった。とても学校とは思えないくらいに廊下が入り組んでいた。 「なによこれ、迷子になっちゃいそう」 迷宮のような廊下を真っ直ぐ進んで行くと、机と椅子が山のように重なっていて行く手を阻んでいた。 「」 「これはどかしようがありません。仕方ありませんので、引き返しま……」 振り返った時に、あたし達は硬直した。 おぞましい生き物が天井からぶら下がってこちらを見ていた。 さっきのとは形が少し違う。天井から人間の上半身が生えているようだった。 あたしは思わず叫んだ。そして、 「よくも脅かしてくれたわね……!!」 冷静さを失っていた。 刀でこれでもかと言う程に斬りつけた。 「涼宮さん……落ち着いて下さい!」 古泉君があたしを止めた時には、その生き物は原形を止めない程になっていた。 説明してほしい? 簡単にいえば乱切りよ。それ以上は言いたくないから。 あたしは肩で息をしていた。なんでこんなにムキになっていたのだろう。 「冷静になることも必要ですよ。体力も消耗しますし」 古泉君は少し怯えた表情であたしを見ていた。自分の言動で逆上されることを恐れているようだった。 なんだか腫れ物に触るような扱いに感じて悲しくなった。 行き止まりから引き返す途中、あたしのクラスの教室を見つけた。 「何で気付かなかったのかしら」 ちょっと期待してたけど、中に入るとあたしの席もキョンの席も、やっぱり血がべっとりとついていた。 キョンの机の中から何かがはみ出ていた。出してみると箱があり、その中に拳銃と幾つかの弾倉が入っていた。 「何でわざわざ箱に入れてあるのかしら」 疑問に思いながらも拳銃をポケットにしまった。 「おや、これはこれは」 「どうしたの?」 古泉君が掃除用具入れから鉄パイプを見つけていた。 「手頃な武器が見つかりました」 感触を確かめるようにパイプを振っていた。 「ねぇ、おかしいと思わない?」 古泉君は表情を引き締めた。 「ええ、確かに招き入れた割に大した罠もなく、かつこれだけ武器が用意してあるというのは少々不自然です」 「だとすると、この世界にあたし達の味方がいるのかしら」 「そうとも考えられます。しかし過度の期待は禁物です。このように武器を提供するので精一杯なのかもしれませんから」 2F 階段を上ったところでいきなり現れた巨大化したゴキブリみたいな虫の大群に対し、古泉君の鉄パイプが早速活躍した。 古泉君が何とかしてくれていなかったら、あたしは卒倒してたかもしれない。想像してごらんなさい、でっかいゴキブリが顔めがけて飛んできてかじりつこうとしてくるのよ。生きた心地がしないわ。 虫の大群はいまや抜け殻の山となっていた。それを蹴散らして廊下を進み、部屋を確認していく。 「……あった!」 こんな所に部室があった。SOS団と書かれた紙に希望が膨らむ。 でも、扉をあけて中に入るとやはり酷い有り様だった。 「うわ……」 本が棚から崩れ落ちたままの状態で埃をかぶり、みくるちゃんの衣装までもが血で染まっていた。 だけどそんな中で唯一、パソコンだけが血を浴びずに綺麗なままだった。 それには二人ともほぼ同時に気付いた。 「古泉君、あのパソコン」 「何かヒントがありそうですね」 「やっぱり味方がいるって考えで正解みたい。よかった」 スイッチを押すと、黒い画面に文章が現れた。 『このメッセージは条件を満たすと表示されるものであり。そちらとの疎通は出来ない』 あらかじめ用意されたプログラムってことかしら。 『裏世界と呼ばれるその空間は現実から隔離されている別の世界』 これは古泉君から聞いたから知っている、でも、その後に表示された一文にあたし達は首をかしげた。 『しかし、神がその世界を支配すれば、その世界が現実となる』 ……つまり、この気持ち悪い世界が現実と入れ替わるってこと? 冗談じゃないわ。 それより、気になる単語があった。 「神とは何のことでしょうか……」 「少なくとも、良い神じゃなさそうね」 パソコンは神ついて詳細を述べることは無かった。でも、そいつにこの空間を支配されたらおしまいってのは分かった。 『クリーチャーは貴方達の憎悪や恐怖が実体化したもの。冷静さを保てば遭遇する頻度は下がると予測される』 つまり、あたしがもっと冷静になれば厄介な敵は現れなくなるってこと? 「ごめんね古泉君、こっからはもっと落ち着いて行動できるように気をつけるわ」 「いえいえ、謝らなくて結構ですよ」 *** 朝学校に来ると、ハルヒがいなかった。珍しく遅刻をしているようだ。 あくびをしながらその空席を見ながら座った時だった。 喜緑さんが教室にやって来た。そして真っすぐに俺のところに歩いてくる。喜緑さんが俺に用があるということは何かでっかい事件があったということだろうか。 「涼宮さんが登校途中で倒れて病院に運ばれました。これは緊急事態です」 いきなりのことに、俺は仰天した。 「なんだって……?」 俺は机上に置いたばかりのカバンを再び持つと、喜緑さんと一緒に教室を出た。授業? サボりというやつだな。 外で朝比奈さんが待っていた。 「キョン君……涼宮さんが……」 「喜緑さんから聞きました。早く病院に行きましょう」 「こちらに来てください」 喜緑さんに手招きされて近づいた瞬間、世界が一変した。 「へ?」 「ん?」 いつの間にか病院の前に立っていた。空間移動をしたらしい。 って古泉はいないが置いて来たとかそういうことはないですよね。 「既に病室にいます。詳しい話は皆さんが揃ってからに」 病室に入ると、ベッドでハルヒが眠っていた。その傍で古泉が待っていた。 「待ってましたよ」 「ハルヒは一体どうしたんだ」 「目撃者の話では、歩いていて突然全身の力が抜けたように倒れたそうです。その原因は……」 「それは私が説明します」 喜緑さんが割って入った。そんなに難しく深刻な話なのだろうか。心配になってきた。 「現在、涼宮さんの精神は抜き取られて別の世界に閉じ込められているようです」 別の世界って……。 「その空間に干渉しているところですが、情報改変が殆ど出来ていません。彼女にヒントや武器を与えることが精一杯です」 武器? どういうことだ、そんなに危険な世界なのか。 「簡単に言うと、サイレントヒルの裏世界、という表現が貴方がたには一番分かりやすいと思います」 「ぇぇっ?」 隣で朝比奈さんが俺以上に驚愕していた。朝比奈さんも知ってるんですか? 「はい、ホラーゲームの初期作の一つとして有名ですから……。でも、あんなゲームの世界に閉じ込められるなんて……」 そこで朝比奈さんがハッとした表情を見せた。 「もしかして昨日の……!」 「昨日ハルヒがうなされてた悪夢のことですか?」 「はい、それが何なの予兆だったのかもしれないです」 「そんなことがあったのですか。やはり狙われていたようですね」 喜緑さんの言う『狙われていた』というのはどういうことなのだろうか。 「閉じ込められている目的は何なのですか」 喜緑さんは古泉の質問に一切のタイムラグなく回答した。 「彼女を閉じ込めた相手はあくまで本気のようで、ゲームの様に楽しませる積もりは毛頭ないようです。相手の目的は、彼女を生け贄にして神を生み出し、その力で裏世界を現実と入れ替えることと推測されます」 生け贄……? おいおいまてよ。 それって、つまり……。 このままじゃハルヒが殺されるのか!? 「なんとかして助けられないんですか!?」 「何度も裏世界の改変を試みましたが成功していません。また相手の正体は不明で、神がどのような力を持つかも推測に過ぎません」 「そういえば、長門さんはどうしたんですか?」 朝比奈さんの一言で思い出した、長門がいない。なんでこんな時にいないんだ。 「長門さんは……隣の病室にいます」 なんだって? 「彼女は裏世界への侵入を試み、現在涼宮さんを捜索中です」 *** 涼宮ハルヒの精神が隔離された空間への侵入を試みたところ、突然「目眩」という症状を起こし、気付くと学校にいた。 しかしそれは全く似て非なるものであった。配置が著しく変えられた校舎内はどこも血痕だらけで、とても禍々しい光景だった。 ここに涼宮ハルヒがいる。 ……おかしい、統合思念体との連絡がとれないので現在の状況すら把握出来ず、おまけに情報操作が全く行えない。 有機生命体の五感を頼る他ないようだ。 前方に何かがいた。 *** 3F 階段を登り終えたときから古泉君の様子がおかしい。 さっきから落ち着きがないし、まるで風邪を引いたみたいに震えて呼吸も荒い。 「古泉君、大丈……」 思わず後ずさりしてしまった。 古泉君の腕が、ところどころカビのように黒くなっているのが見えた。 「こ、古泉君?」 もう、古泉君は古泉君ではなくなっていた。 「亜阿あああぁ唖あああああああああ!!」 古泉君は意味不明な言葉を叫ぶと持っていた鉄パイプであたしを殴りにかかった。 あたしはなんとか避けたけど、古泉君はまだあたしを狙っていた。 走って逃げたけど、向こうも走ってくる、逃げるのは無理みたい。 振りかぶった隙に鉄パイプを奪い取ることには成功したけど、古泉君は素手での攻撃を止めない。何度も何度も掴み掛ろうとする。 「ちょっと…………やめ……て……」 「ぁぁぁぁぁぁぁ………………あはははははは……!」 古泉君があたしの首を締めようとしてくる。あたしはポケットから拳銃を取り出した。古泉君を突き飛ばしてその隙に距離をおき、構えた。 「ごめんなさい!」 拳銃の弾は、古泉君の頭を貫いた。糸が切れた操り人形のように倒れ、もう動かなかった。 「古泉君……何で……?」 なんでさっきまで味方だったのに突然こうなったの? しばらくして落ち着きを取り戻してから、古泉君の服のポケットからショットガンの弾を取り出す。 その時、何かが光っているのが見えた。古泉君の首に紐に通された鍵がかかっていた。 鍵には「体育館」と書いてある小さな紙が貼ってあった。 *** 痛い……? 寂しい……? 怖い……? 様々なエラーが発生し、私は歩みを止めた。 理解不能、私にはそのような「感情」など……。 では、どうして呼吸が乱れている? どうして過度に背後を警戒する? どうして前進を躊躇う? どうして? それらの自問に答える事が出来なかった。 幾度となく殲滅させた筈のクリーチャーが再び現れた。彼らは執拗に私を喰らおうとやってくる。 それに対して、箒を分解して金属製のパイプのみにしたものを応急的な武器としているが、簡単に折れてしまいもう箒の残りは少ない。持久戦になればこちらの劣勢は明らか。 早急に新たな戦法を練らなければならない、そう思った時だった。 机の上に、いつの間にか機関銃が置いてあるのが視界に入った。 それを手に取った瞬間、メッセージを受信した。 『私達に出来るのはこれ位だけど、これで思いっきりやっちゃいなさい!』 「朝倉涼子……」 統合思念体の干渉はこれが精一杯のようだ。しかし……、 「充分」 私はその機関銃を手にすると、向かってくるクリ―チャ―を飛び越えて走った。 この裏世界はゲームではない。 たとえチートと言われようと構わない。 あらゆる手段を尽くして、この世界を終わらせる。 *** しばらく目を閉じていた喜緑さんが目を開けた。 「裏世界の観測が可能になりました」 待ちに待った知らせだった。ここに来て数時間ずっと気になっていたことをぶつける。 「ハルヒは、長門はどうなってるんですか!?」 「現在は二人共に大丈夫のようです。しかし、裏世界ではキョンさん、古泉さん、朝比奈さんは死んでいます」 「なんだって……?」 「あくまでもあの空間は仮想のものであり、そっくりにコピーしたものです。しかし、世界が入れ替わった場合はそれが現実となり、その時にはあなた方は消えてしまいます」 俺達三人は固まってしまった。 十数秒たってから、その静寂を破るように、朝比奈さんが消えそうな声で言った。 「消えちゃうんですか……」 「……くぅっ……」 ハルヒがまた苦しそうな声をを漏らした。 自分に何もしてやれないことに腹が立つ。俺達はハルヒに触れることすら許されない。接触すると相手に何かされる懸念があると言う。 目の前で苦しそうに顔を歪めながら眠っているハルヒを見てやることしか出来ない。 頼む、頼むから、無事に目覚めてくれ……。 俺達には祈ることしか出来なかった。 *** 体育館 「やっと来たのね」 古泉君の持っていた鍵で扉をあけると、体育館で待っていたのは予想通りアイツだった。 ここも照明は機能してないけど、霧がわずかな明かりとなってアイツの顔を照らしていた。 ここに来るまでに、アイツの正体はなんとなく分かっていた。 アイツの声は聞いたことがなかった。何故なら、それが自分の声だったから。 「アンタがこの世界のあたしなの?」 「そう、だったら何?」 「何でこんな事をしたの」 「この世界は唯のコピー、いつかは消される運命にある。それが気に入らないの。だから神の力でこの世界と貴方の世界を入れ替えてこの世界を本物にするの。みんな、神を生み出すのに必要な犠牲だったのよ」 神……? 「紹介するね、これがこの世界の神よ」 暗くて気付かなかったけど、アイツの隣に巨大な化け物がいた。 あたしが想像する神は、宗教とかそんなの抜きでももっと綺麗なものだった。 けど、目の前に現れた神は、とても神とは呼べないものだった。 5メートルはあろう神だという生物は、人の形はしているがひどく痩せていて、やはり血まみれだった。 「神は絶対的な存在よ、全てを支配するの。だから、人間は神にはなれないの」 アイツが話を区切る度に静まり返る体育館。「神」がこちらを見ている。その視線を受けたあたしは一歩も動くことが出来なかった。 「この神はまだまだ未熟だから、憎悪という感情が足りないの、だから貴方が神に必要な生け贄に選ばれた。そんな貴方がちょっとでも強力になってもらう為にあの男を殺したの」 あたしの怒りを増すためだけにキョンを殺したなんて……。 でもあたしは何も言えなかった。それに対して怒れば相手の思うつぼだし、こんな魔物の生け贄に選ばれたことがショックだった。 「神に逆らうことは許さない。例えあたしでもね」 突然、「神」はアイツを手にとり、じっくりと舐めるように眺めていた。 「あら、神は貴方よりあたしを先に欲しいみたいね」 「な、何言ってるの? アンタも殺されるのよ」 「いいえ、光栄なことよ。神のヴィクティムになるのだから……」 神は我慢できなくなったのか、突然そいつをまるでスナック菓子のように喰らいついた。 アイツの身体が噛み切られて……。これ以上言わせないで。 「う……わ……………………」 あたしはとっさに目を瞑り、耳を押さえた。それでも骨の砕けるような嫌な音が響いていた。 しばらくして音がなくなった。 どうやら食事が終わったらしいので目を開けるた。「神」は血をぼたぼたと垂らしながらあたしを見ている。 次に喰われるのはあたし。 アイツへの復讐は出来なかった。でも、この「神」とやらをなんとかしないと、この世界は終わらない。あたしは、ショットガンを構えた。 「くたばりなさい!!」 引金を引いた瞬間、強い衝撃で肩に痛みが走った。 あたしのような体格では、反動の大きなショットガンは身体に負担がかかることは百も承知。 でも、これは遠距離からでもダメージを与えられる数少ない武器だから、それくらいは我慢。 肩の痛みを堪え、次々と弾をこめては頭を狙って撃ち続けた。 ダメージがあったのか、「神」は呻き声を上げている。 「やったかしら」 油断してしまった。次の瞬間、その長い腕でなぎ払ってきた。 避けようとすることすらできなかったあたしの身体は宙に浮き、十数メートル飛ばされて叩きつけられた。 何とかして立ち上がったけれど、全身が打撲で痛い。ショットガンもどこかに飛んでいってしまった。こんなに暗い中ではすぐには見つからないから諦めるしかない。 「いっ……たいじゃない………………!」 あたしはふらつきながらも再び「神」と向き合い、拳銃を撃ちながらショットガンを探した。 でも「神」は怯むことなく迫ってきて、またその腕に弾き飛ばされた。 「ぅう……」 床に叩きつけられたときに頭を強く打ってしまい、立ち上がることが出来なくなっていた。 拳銃も暗闇の中に消えてしまった。 近づいてくる「神」から逃げようと痛む四肢を必死に動かして床を這ったけど、すぐに追いつかれてしまった。 あたしはとうとう「神」の手で押さえ付けられてしまった。腰には日本刀があるけど、激しい痛みで手が動かなくなっていた。 血でべとべとの「神」の手に圧縮される気分は最悪だった。 苦しい、息が出来ない。こんな化物に食べられるなんて……。 「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 叫んでもここには誰もいないから無駄なことは知ってる。けども、最後までこいつに抗っていたかった。 その時、「神」の荒い呼吸に混じって、誰かの足音が聞こえてきた。 「させない」 ……有希!? 銃声が絶え間なく響いていた。「神」はたまらず悲鳴を上げてのけぞり、あたしはなんとか手から解放されたた。 視界が開けて、音のする方向を見ると有希がマシンガンを撃ち続けているのが見えた。 何十発撃っただろう、「神」は遂に倒れた。それでも有希は「神」が完全に動かなくなるまで攻撃をやめなかった。 マシンガンの音が止む。そして、ガシャンという大きな音を立てて床に落とした。 そしてこっちに駆け寄って、あたしの身体を支えて立たせてくれた。 「涼宮ハルヒ」 「有希……、ありがと」 「いい、私も……一人で心細かった……」 あたしと有希は抱き合ったまま、静かに泣いた。 窓から眩しい光が射している。霧が晴れて、青空が見えた。 外に出ると、校舎は相変わらずだったけど、空気はよどみがなく透き通っていた。 太陽が眩しい。あたしと有希は、その光に包まれていった。 *** 涼宮さんが目を覚ましたようです。 状況説明が困難な為、長門さんが隣の病室にいることは涼宮さんには内緒になっています。 「…………」 涼宮さんと同時に目覚めた長門さんは、ぼんやりと自分の手を見つめていました。 「どうしました?」 「大量のエラーが発生している。身体の制御すら上手く出来ない」 彼女の手は震えていました。 「もう大丈夫ですよ」 私はそっと彼女を抱き締めました。彼女は私に顔を埋めていました。おそらく、泣いていたのだと思います。あくまでも推測ですよ。 数分間そのままでいましたが、長門さんが離れました。 「エラーの削除が完了した」 「では、そろそろ涼宮さんの所へ行きましょう。貴方は涼宮さんにプリンを買いに行ったことになっています」 「……分かった」 「では、情報操作を始めますね」 その時、彼女が小さな声でありがとうと言いました。少し恥ずかしそうでしたね。 情報操作により、私以外は今回の事件についての記憶を失い、長門さんは涼宮さんの見舞いに来たことになりました。これは、トラウマと呼ばれる精神状態に陥らない為の救済措置です。 さあ、私はこの病院にはもう用はないので学校に戻りますね。 それでは失礼します。 inspired SILENT HILL 3 おまけ 長門有希がビビりプレーヤーだったら 痛い……? 寂しい……? 怖い……? 様々なエラーが発生し、私は歩みを止めた。 それらのエラーを言語化するならば……、 「帰りたい……」 いっつも助けてくれるパパ(統合思念体)との連絡がとれないから、一人でなんとかするしかない。 でも、この間キョン君に借りたゲームをしたばっかりだから怖さ倍増なの……。 どうしよう、有希泣きそうだよ……。 「こわいよパパ……」 あー来る、こういう所絶対何か来る。ドッキリ要素というものが絶対ある。 こういう時は……、歌を歌おう。 「ある~はれ~たひ~のこt」 ガッシャーン! 突然ドアを突き破ってクリーチャー登場。 「POOOOOOOOOOO! ふっざけんにゃよ! もーやだ! 無理! 終了! 終了!」 私は走りながら思い切り泣いた。いいもん、誰も見てないから……。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんパパァァァァァァァァ~~!!」 MISSION FAILED... おまけ 2 あのEnd マシンガンの音が止む。そして、ガシャンという大きな音を立てて床に落とした。 そしてこっちに駆け寄って、あたしの身体を支えて立たせてくれた。 「涼宮ハルヒ」 「有希……、ありがと」 「いい、私も……一人で心細かった……」 あたしと有希は抱き合ったまま、静かに泣いた。 突然、窓から眩しい光が射した。 「なにあれ!?」 空中に浮かぶ複数の円盤、それは……、 ま さ に U F O 「有希! UFOよUFO! これは調査しなきゃSOS団の名が廃るわ! あたし達の活動を全世界に広められるチャンスよ!」 あたし達は外に出た。グラウンドに着地していたUFOは合計三機。中から出てきたのは、期待通りの宇宙人! 「ユ、ユニーク(タコさんウインナー……)」 「ねえあなたたち! どこから来たの?」 「 %*#\$@=-@!」 「な、何言ってるのかサッパリね……」 「意思疎通は困難と思われる(おいしそう……)」 「+ |\ ; *// #!」 宇宙人が取り出したのは、光線銃? ビビビビビビビビビ いきなり有希が撃たれて倒れた。有希は痺れて動けない様子だった。 「………………ユニー……ク…………(一口だけでもかじってみたかった……)」 「有希ー! 有希ー! ユニークとか言ってる場合じゃないわよ! アンタ達! 何するのよ!」 「 *#/(^^) $/-!」 すると今度はあたしに光線銃を向けた。 「な、何よ! やめなさ……いやあああああああああああああ!!」 そして動けなくなったあたし達はUFOに乗せられて…… ユニーク(笑)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5463.html
~ハルヒサイド~ 大井までブラックバードと共にいき、paにとまった。そこで、運命的な再開をする。 ブラックバードのドライバー「どうも、まさかこのZが走るなんて・・・・ん?お前、ハルヒなのか?」 なぜかあたしの名前を知っていた、びっくりした。まさかキョンがあの『湾岸の黒い怪鳥』とも呼ばれるブラックバードのドライバーだったから。 キョン「まさか、お前がそのZを見つけるとわな・・・たまげたよ。不思議を探してたお前が不思議を持ってきたんだから。」 あたし「どうゆう意味よ、まさかこの車にはとんでもない何かがあるんじゃないでしょうね?」 キョン「その『まさか』だ。それはここ(湾岸)では『悪魔のZ』と呼ばれていたZだ。ついでに言うとこれは古泉が乗っていたやつだ。あいつが自分でここまで組んだんだ。」 あたし「悪魔?まさか、これは呪われたZなの?」 キョン「違う、あまりにも速過ぎるからこの車には悪魔がいるって言う噂のせいだ。俺と古泉は、いわばライバルだったって訳だ。」 あたし「でも古泉君はロンドンよ、しかも有希がいる。恋人がいても走ってたの?」 キョン「ああ、だが、ちょっと前だったな、あいつは長門・・・いや、有希が寂しがっていることに気付いた。そして、ここ(首都高)を降りるといったんだ、そしてZから吹っ切るためにロンドンまで行った、本当だったら、スクラップになるはずだったんだが、お前が見つけた、そうだろ?」 あたし「そうだったの・・・」 キョン「お前はなぜこのZを選んだんだ?もっといい車もあったろうに。」 あたし「Zがあたしを呼んだの、まるで一緒にいたいと問いかけるように。」 キョン「まるで古泉が行ったをもう一度聞いてるような気分だな、たしかにそのZは人同士がまるでコニュミケーションするみたいに走っているからな。だが、お前が変わればそのZは応えてくれなくなる。よく覚えて置け。」 あたし「何よ、平の癖に団長に口出しする気?まあ、いいわ。いまや湾岸一のドライバーなんだもの、大目に見てあげる。でも覚悟しなさい、いつかあたしがあんたを倒すから!」 キョン「やれやれ」 ~キョンサイド~ 大井まで同行、その後paでとまり、ドライバーに挨拶することにした。ここで運命的な再開をすることになる。 俺「どうも、まさかこのZが走るなんて・・・・ん?お前、ハルヒなのか?」 偶然過ぎる出会いだった。あのハルヒがこのZのドライバーだった。 俺「まさか、お前がそのZを見つけるとわな・・・たまげたよ。不思議を探してたお前が不思議を持ってきたんだから。」 ハルヒ「どうゆう意味よ、まさかこの車にはとんでもない何かがあるんじゃないでしょうね?」 俺「その『まさか』だ。それはここ(湾岸)では『悪魔のZ』と呼ばれていたZだ。ついでに言うとこれは古泉が乗っていたやつだ。あいつが自分でここまで組んだんだ。」 本当は機関の人間らしいが。 ハルヒ「悪魔?まさか、これは呪われたZなの?」 俺「違う、あまりにも速過ぎるからこの車には悪魔がいるって言う噂のせいだ。俺と古泉は、いわばライバルだったって訳だ。」 ハルヒ「でも古泉君はロンドンよ、しかも有希がいる。恋人がいても走ってたの?」 俺「ああ、だが、ちょっと前だったな、あいつは長門・・・いや、有希が寂しがっていることに気付いた。そして、ここ(首都高)を降りるといったんだ、そしてZから吹っ切るためにロンドンまで行った、本当だったら、スクラップになるはずだったんだが、お前が見つけた、そうだろ?」 ハルヒ「そうだったの・・・」 俺「お前はなぜこのZを選んだんだ?もっといい車もあったろうに。」 ハルヒ「Zがあたしを呼んだの、まるで一緒にいたいと問いかけるように。」 俺「まるで古泉が行ったをもう一度聞いてるような気分だな、たしかにそのZは人同士がまるでコニュミケーションするみたいに走っているからな。だが、お前が変わればそのZは応えてくれなくなる。よく覚えて置け。」 ハルヒ「何よ、平の癖に団長に口出しする気?まあ、いいわ。いまや湾岸一のドライバーなんだもの、大目に見てあげる。でも覚悟しなさい、いつかあたしがあんたを倒すから!」 俺「やれやれ」 そうしながら、夜が明けて行った・・・・・。 続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1802.html
「はぁ……はぁ……」 俺がこの道を自転車で全力疾走するのは今回で一体何度目だろうか。 しかも呼び出されるのは決まって夜、おかげで俺の貴重な睡眠時間は 鰹節の如く削られていく一方だ。呼び出すなら昼に、学校を合理的に 早退できる理由もセットでお願いしたいものだね。とはいっても相手 も同じくうちの学校の生徒なんだから叶わない話だが。 事の始まりは今から約三十分ほど前、珍しく(というか初めてか?) 長門の方から俺に電話がかかってきた。あの超無口宇宙性人造人間は 電話を持っているくせに自分からは全く活用しないのだ。俺としては あいつのクラスの連絡網がどうなっているのか非常に気にかかるとこ ろだが。そしてその長門が俺にかけてきた記念すべき初電話、その内 容は「時間がない。早く来て」と来たもんだ。しかも直後に人間大の物 体が床に倒れこむようなダイナミックな音が付属してるんだから急が ないわけには行かないだろう。 時間が時間なだけに(現在夜の十一時)親が心配してきたが、「谷口 の家に宿題を忘れてきた、ついでにやっていくから一晩かかるかもし れない」と言っておいたので多分大丈夫だろう。いざという時には我 が友人の臨機応変な対応に期待するとしよう。 そうこうしている間に俺を乗せた自転車・小泉京子号(ハルヒ命名) は俺の自己ベストを塗り替える速さで長門のマンションの前に到着し た。俺は小泉京子号を厳重なロックを施して公園の隅に停車し、その まま長門の部屋へと赴いた。長門が手回しをしてくれたのだろう。部 屋やマンション自体の鍵は開いていた。 「長門……!?大丈夫か!!」 俺が部屋に入って最初に見たものは、電話を握り締めたままその場 に倒れこんでいる長門の姿だった。俺はすぐさま長門のもとへと駆け 寄りその小さな体を抱き上げた。額に手を当ててみるも大きな体温の 変化は感じられない。いや、ぐったりはしているが瞳にはいつも通り のなんともいえない力強さがある。 「大丈夫か長門!何があったんだ!!」 問い掛ける俺に長門はか細く、だが確りとした口調で答えた。 「大丈夫ではない。私がこのインターフェイスに留まれるのは後二十 時間が限界。」 「どういうことだ?」 「地球における人間という生き物の、遺伝子レベルでの生体情報が不 足している。このままではこのインターフェイスの現在の形状を維持 することができない。」 いつも通り細かいところまでは伝わってこないが。大まかな意味は取 れた。要するにこのままだと後二十時間程で長門は死んでしまうとい うことだろう。そして俺を呼んだということは、それを回避すること が俺には出来るということだ。 「つまりその生体情報というのが必要なんだな?長門、俺に何が出来 る!何が必要なんだ。」 気のせいでなければ長門は一瞬てれたような表情をし、いつも通り の口調で……こう言った。 「精液。」 ……は?俺は聞き違えたのだろうか?いや、しかし俺が聞き違えたと は思えなければ、同様に長門が言い違えるとも思えない。まさか精液 なんて……。えーっと長門さん、もう一度言って貰えると…… 「あなたの聴覚は正常に機能している。私は精液といった。人間の雄 の精巣より分泌される遺伝子情報を多分に含んだ良質のタンパク質で……」 そんな詳しく説明されなくても、そんなことは誰よりも理解している。 それよりも何で俺なんだ? 「あなたの保有している遺伝子情報量は常軌を逸している。あなた自 身は力を有してはいないが、涼宮ハルヒにあの能力を与えたのはあな た。だからあなたは涼宮ハルヒに選ばれた。」 全く理解が出来ん。つまりは何だ?ハルヒが世界を自分の思い通りに する能力を身に付けたのは俺が原因で、宇宙人でも未来人でも超能力 者でもない俺がSOS団にいるのはそれが理由って事か?今まで現実 離れした体験をいくつもしてきたがこの話が一番現実離れしている。 だいいち……ん?何か下腹部の辺りでもぞもぞと動いているのだが何 だろうか? 俺が首を下の方へと傾けると、長門の小さな白い手が俺のズボンの チャックを開けているところだった。 「な、長門……」 長門は無言で俺自身を取り出すと、まだ起ち上がっていないそれを柔 らかな手で軽く撫で回し始めた。 背筋を走るゾクリする何か。これまでで一度も感じたことがないほ どの快楽。物の数秒でオレは起ち上がっていた。 「……」 長門いつも通り無言で、いつも通りじゃない恥ずかしそうな表情でオ レをしごき始めた。コレは、正直、かなり、クる。 心なしか長門の呼吸が荒くなってきた気がする。長門の小動物のよ うな瞳は、もうオレしか捉えていない。そして、十年前から、あるい はもっと前から定められていたかのような自然な動きで、長門の口は オレを受け入れた。 生暖かい口膣の感触がさらにオレの感覚を鋭敏なものとする。あぁ、 そろそろヤバいかも…… 「長門、出……!」 俺が言い切る前に、俺が後ろに腰を引く前に、オレは長門の口内で爆 発してしまった。……言い訳をするなら長門の手が俺のオレを握った まま放してくれなかったからなのだが。それにしても早かったな、我 ながら。 「スマン、長門。……大丈夫か?」 一瞬間をおいて、長門の喉もとから小さく、何かを嚥下した音がした。 「問題ない。それよりこっちにも。消化器からの吸収だけでは不十分。」 長門は軽く姿勢をずらすと、着ていた制服のスカートを捲り上げた。女 の子らしい可愛い下着がチラチラと見え隠れしている。 「そんなこと言ったって……。長門はそれで納得できるのか?」 「できる。ここで私が消えてしまえば今日現在までのことが全て無意味 になる。それだけは避けたい。」 ……そうか、長門自身もSOS団での思い出を大事に思うところがある のだろう。俺にしたってこのまま長門と生き別れてしまうのはゴメンだ。 「ああ、わかった。お前のためなら協力してやるとも。それでだ、もし 途中でイヤになったりしたら早めに言えよ。じゃないと俺も中断できる 自信がない。」 「その仮定はありえない。私はあなたを欲している。だから現在仮定で きるのはあなたがこの申し出を拒否すること。強制はしない。あなたが 決めて。」 何を今更言っている。俺だってもう腹を括った。俺は肯定の意思を行動 を起こすことで明確にした。正座していた長門を抱きしめるようにして 押し倒し、俺は自らの手を長門のスカートの中へと忍び込ませた。 スカートの中は長門自身の体温で何とも形容し難い不思議な空間にな っていた。汗で少しジトッとしている太ももなんかを愛撫していると、 普段から表情の薄い長門の顔に明らかな羞恥の色が見えて、俺も少し照 れてくる。戯れあうような愛撫もいい加減お開きにして、俺は手を太も もから下着の方へとずらしていった。下着越しに触る長門はふにふにと 柔らかく、そして湿っていて、とてつもなく官能的だった 下着が濡れていくにつれ、長門の吐息もまた大きなものとなっていく。 俺は愛撫を中断して長門の下着を脱がせ、スカートの中に頭を突っ込んだ。 発音と味の判断にしか使われてこなかった俺の舌が、長門を責めるため の道具として縦横無尽に這い回る。 「はぁ……この行為は……ん……性交に当たって……不要な行為のはず……」 途切れ途切れに長門が話し掛けてくる。まぁ無くても支障は無いが、あった ほうがスムーズに事が運ぶ。 「…そう……」 そうして長門は息を荒くしたまま押し黙ってしまった。 さて、一体どれほどの時間が経過したのだろうか。長門の吐息には微かに 喘ぎ声が混じるようになり、オレもまた大分切羽詰ってきている。そろそろ……かな。 俺は体勢を立て直し、いわゆる正常位のかたちで長門にオレをあてがった。 「あ……」 全身がそのまま飲み込まれてしまうような肉の感触に早くも果てそうにな るが、どうにかこうにかそれを耐える。破瓜の証で少し朱色に染まった長門 を見て、気の毒そうに思うと同時に、俺は興奮した。 「長門、痛くないか?」 「へいき。」 「じゃあ、動くぞ?」 「……」 無言を肯定と受け取った俺はゆっくりと腰を動かし始めた。うねるような襞に 擦れて飛びそうになる意識を何度も取り返して、前後運動を続ける。 空間を支配する水の滴る淫靡な音と、パンパンという肉のぶつかり合う音。 「ふぁ……ん……ぁ……ん……」 そしてか細くもそれらに負けなく優美で誘惑的な長門の声に。俺は正常な思考が 出来なくなる。 「長門、どうだ?気持ち良いか?」 「……」 長門は答えない。変わりに俺と同気するように規則的に揺れるシャギーの入った 銀髪とセーラーのリボン。汗ばみよがる長門の顔を見て、俺の我慢は限界へと達 した。 「長門……出すぞ……!!」 「…………!!」 長門のスラリとした足が俺の腰を周り、確りと身体を固定する。そして俺はオレの 白い欲望を、長門の白い肉体の中に一滴残らず吐き出した。 ………… ……… …… … 「長門、これでお前は大丈夫なんだな?」 「大丈夫。これで向こう三年間はこのインターフェイスの維持が可能。」 「そうか。そいつは良かった」 俺は本当にこれで良かったのだろうか。長門がこれで死ななくて済むのは嬉しいが、 気になる事がいくつか出来てしまった。 “涼宮ハルヒにあの能力を与えたのはあなた。だからあなたは涼宮ハルヒに選ばれた” ハルヒの過去と俺の過去、俺自身の特異、長門に聞こうかとも思ったが流石にそうい う空気じゃないよな。こう見えて俺は結構空気が読めるほうなんだ。それに俺自身も う少し余韻に浸っていたい。どうせ近い未来、全ての欠片が合致することもあるだろ う。その時にSOS団が今のような関係を維持できているとは限らない。今は今、過 去は過去、未来は未来。俺は今、自分に出来ることを精一杯楽しむことにしよう。 ~end~
https://w.atwiki.jp/haruhi_sinnrosidou/pages/25.html
次の朝 教室にて ハルヒ「おはようキョン。早いわね」 キョン「お、おう…」 ハルヒ「進路希望調査、書き終わった?」 キョン「……残念ながら」 ハルヒ「……ふーん。ま、そういうと思ってたわ ……よし、あんたには特別サービスよ」 キョン「何だ?」 ハルヒ「今日の放課後、マンツーマンで進路考えてあげる?」 キョン「はぁ?」 キョン「いらん」 ハルヒ「いらんって…、これはあんたの問題なのよ?しかも人生を左右するかもしれない問題…。 あんたそれ分かってる?」 キョン「分かってる分かってる」 ハルヒ「分かってないわね」 キョン「…もういいよ。……あんま寝てないんだから騒がないでくれ」 ハルヒ「な!なによ!その言い方…!」 俺机に突っ伏すと、昨日の疲れがあったのかそのまま意識を埋没させた。 俺はどこにでもいる普通の高校生だ。それ以上でもそれ以下でもない。 お前や長門みたいな特別な人間じゃないんだ、ハルヒ。 俺は平凡な職につき、平凡な家庭を築き、平凡な生活を送る。 それでいい。 進路なんて今考えても仕方がない。 この時の俺はそう思った 俺は眠たい授業をのらりくらりとかわし続け、気付けば放課後だ。 SOS団部室に行くと、パソコンを難しい顔で眺めるハルヒと、窓際で置物のように本をよむ長門。ボードゲームをがちゃがちゃとイジる古泉に、美味しそうなお茶を淹れる朝比奈さん。 なんら変らない毎日の連鎖。このなかに人生のターニングポイントなんてものが存在しているとは全くもって思えない。 俺は思う。つまらない毎日の連鎖はごめんこうむるが、楽しい毎日の連鎖は素晴らしいものじゃないか。 SOS団がくれる非日常。それは迷惑なものだが、正直スリリングなんだ。俺の中で。 連鎖は連鎖でも、楽しい連鎖ならいいじゃないか。 俺はこのSOS団が紡ぐ連鎖の中に、ずっといたい。 ハルヒ「………!」ガタン キョン「…どうした、急に立ち上がったりして」 ハルヒ「…私、用事があるんだったわ!」 キョン「ま、またかよ!」 ハルヒ「ごめん!あたし帰るね!」 古泉「はい、お気をつけて」 ハルヒ「あとキョン!」 キョン「うん?」 ハルヒ「明日暇でしょ?」 キョン「あぁ」 ハルヒ「じゃあ明日図書館に来なさい! 進路指導してあげるわ!!」 キョン「行かんぞ」 ハルヒ「図書館前に11時に集合ね!」 キョン(休みの日にハルヒに絞られにわざわざ図書館まづ行くやつがどこにいるんだ) ハルヒ「あたしは行ったわよ!じゃ、急いでるから!」 バタンッ キョン「俺は行かんって言ったからなー!?」 キョン「……なんであいつはあんなにも勝手なんだ」 古泉「それが彼女の魅力でもありますね」 キョン「……ごめんだね」 みくる「……それにしても涼宮さん」 キョン「ん?」 みくる「すっごく眠そうにしていたような……」 長門「………」 みくる「あ、あの、パソコンで何してらっしゃいましたけど……」 長門「………(じーっ)」 みくる「!……い、いえ、なんでもありません…」 キョン(図書館…か) 次の日 キョンの妹「キョンくーん!おひるだよー!」 キョン(……お昼?) キョンの妹「おーきーてー!」 どすんどすん!! キョン「ぐおあ!……は、腹の上で……」 キョン(そうだ、今日は休日か………ん!?)ガババッ キョンの妹「ひゃあ!」 時計「チッ、チッ、チッ、チッ」 キョン(まだ朝の10時か……。 いまから光の速さで準備すればまだハルヒとの約束に……) キョンの妹「キョンくんいーたーいー!急に起きないでー!」 キョン(いや、でも俺…約束はしなかったよな…?) キョン(そうだ。あいつがいつものように勝手にとりつけただけじゃないか) キョン(行く義務はないよな……) キョン「……寝る」ドサッ キョンの妹「ちょっと、キョンくーん!」 キョン「まだ昼まで二時間あるだろ?二時間たったら起こしてくれ」 俺のターニングポイントはまさに、この時だった ……… …… … 時計「チッ、チッ、チッ、チッ」 キョン「…………」 キョン(………気になって寝れん) キョン(……12時か。 ハルヒのやつ、帰ったのかな?) キョン(………) キョン(………) キョン(………) バッ、ババハッ キョン「いってきまーす」 この日から、俺の生活はがらりと一変した。
https://w.atwiki.jp/haruhi_best/pages/58.html
涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 長門ユキの牢獄 よし、まずは落ち着こう。孔明の罠かもしれないから 俺は目を閉じて大きく息を吸い込み、そしてゆっくりと吐き出した。 いわゆる深呼吸というものだ、これを行うことで人間は新鮮な空気を肺に送り込み 新鮮な空気は肺より血液に染み込み、そして脳や心臓に浸透する。 簡単にいうとリフレッシュすることができる。 物事を考える前にするととても効果的だ。 よし、落ち着いた。 頭の中で深呼吸の解説を3時間ぐらいできそうなぐらい落ち着いた 俺はゆっくりと眼を開き、 「どうかしたのキョンおじちゃん?」 どう見ても小学校低学年の容姿をした長門を見て 少し、泣いた。 長門ユキの牢獄4 俺はねぇねぇとすがりつく長門を無視して、とりあえず今日一日のことを思い出し始めた。 一日の始まりはこのごろでは珍しく、自分の家から この間の夏祭り以来、ハルヒの監視が厳しい いつもの視線がギンッって感じとすると、このごろの視線はズキャァァンって感じだ 俺は長門と話し込むたびに銃殺される気分だった。 ともかく、俺の朝は妹のシャイニングウィザードもどきにより始まった。 朝食は痛むあごをさすりながら妹と一緒に食べた。 ふと時計を見ると本日のパトロールの集合時間が迫っていた。 逝ってきます、と告げる俺に妹がじゃれついてきた 聞けば今日のパトロールに参加したいのだと言う 俺は数秒考えたが、この狂った夏に必要なのはハルヒの体験した事が無い未知のもの むしろイレギュラーは望むべきものだった というわけで俺は妹の参加を快諾したのだった 集合時間の5分前には駅に到着したが、そこはSOS団 他のメンバーはとっくに集合していた この時の長門の様子はいつも通りだったと思う。 奢る、奢らないかでひと悶着あったのだがそこは割愛 とりあえず妹の参加を伝えると、ハルヒはテンションを三倍増させたのだった。 いつものグループ編成、このごろは長門のイカサマをしていたが今回はズルは無しだ。 久しぶりの運試しに不覚にも少し、ワクワクしてしまったのを覚えている。 結果は俺、古泉、妹という考えうる最低メンバー 久しぶりの古泉スマイルに不覚にも少し、ビクビクしてしまったのを覚えている。 (だ、だいじょうだよな) 忌まわしき黒歴史は再起動を果たした長門によって封じられたはずである 閑話休題 そのあとは照りつける太陽を避けて、適当に建物に入り時間をつぶした。 妹がこれ買って、あれ買ってと五月蝿かったが俺はうまくかわして、すべて古泉に押し付けた。 おかげで古泉の野郎、今日だけで5千円近く使ったのではなかろうか? いい気味だ、待ち合わせのたびに奢らされる俺のつらさが少しはわかっただろう 待ち合わせの場所に到着 集合場所では既に到着していたSOS団女性陣の冷たい視線が俺を迎えてくれた そのあまりの冷たさに、今が夏であることを忘れそうになる まず朝比奈さん、視線を俺から妹へ、妹から俺へと忙しく動かしている。 その表情は厳しく、まるで朝比奈さんに似合ってない。 それからハルヒ、なんかやっぱりね、って感じで納得していやがる。 その勝ち誇った表情は非常にムカつくが、ハルヒらしいといえばらしい。 最後に長門、視線を一転に固定して微動だにしない その刺すような視線を追うと、そこには妹の手にある買い物袋(古泉に買ってもらった服などが詰っているはず)があった。 そう、今思い出せばこの時からだった長門の様子が変になったのは その後、妹の活躍によりなんとか和んだ空気の元、定例の報告会 もちろん、新しい宇宙人も超能力者も未来人も見つからなかったわけで即時解散ということになった。 妹との帰り道 先程の女性陣の様子が変だったのはなんだったんだろう、と思っていた所に着メロが響いた 誰からだろうと画面を見てみる、そこに映し出されていたのは見慣れた長門の家の番号だった。 妹から少し離れ電話を取る 「どうかしたか?」 この頃はハルヒの監視の目が厳しいので当分は会わないことにしている ならば、別のところで問題でも起こったのか?と心配になって聞いてみる。 「……来て」 俺の質問には一切答えず、長門は用件だけ言うとあっさりと電話を切った。 「?」 わけがわからない。 無口キャラを地でいく長門も電話だったらそれなりにしゃべる。 それが人と視線を合わせて喋るのが苦手なのか、仕草で伝えることが出来ないからなのかは知らないが。 …そんな長門が、ただ一言 もしかしたら俺の想像も出来ない何かが起こっているのかもしれない。 そう、考えた俺ははやる気持ちを抑えて、妹に「国木田の家に泊まる」と告げて別れた。 俺は妹の姿が見えなくなってすぐに走り出した、目指すは長門の住む分譲マンション 待ってろよ長門 ―――――と、長門の家に着いたのが十分ほど前だ そこで俺を迎え入れてくれたのがこのチビ長門というわけだ チビ長門、便宜上この名前で呼ぶことにする。 身長は俺のへその高さくらい、体重は40キロあるかも怪しいだろう 見た目で言えば小学3年生ぐらいだろうか? ようやく俺の論理回路が動き出したようなのでチビ長門に質問してみる。 「君の名前は?」 「長門ユキ!」 元気いっぱいに答えてくれましたよ。 「うん、俺の知り合いにも同じ名前の人がいるんだけど、その人から何か聞いていない?」 俺はなるべく刺激しないように、ゆっくりと丁寧に聞いた。 チビ長門は最初は頭の上に?マークを出して考えていたが何かを思いついたのか、頭に豆電球をつけて居間に走った。 テコテコと戻るチビ長門の手の中には一通の手紙があった 俺はチビ長門から手紙を受け取ると少し手荒に封を開けた。 中に入っていたのは長門らしい明朝体の文章が少し長めで記されていた。 ――本日、定例のパトロールの中で一つの議案を涼宮ハルヒが発表した。 いきなり本題に入る所なんか長門らしいな、と思いながら続きを読んだ。 ――即ち「キョンは重度のシスコン」疑惑である 俺はずっこけそうになる体を強引に支えた、支えなければチビ長門がぺしゃんこに潰れていただろう ハルヒ、あの女に一回ぐらい俺の剛直をぶち込まなければならない気がしてきた ――語られる証言は、証拠ととるにはあまりにも不十分だった 当たり前だ、むしろ邪険に扱っている時のほうが多かった気がする ――が、その後にこのような事を涼宮ハルヒは語った 「いい?もし今日あの娘が買い物袋を持って、うれしそうにしていたら危険信号よ いやらしいキョンのことだから、物品と交換で破廉恥なことをあの娘に要求するに違いないわ。 いえ、もしかしたらもうその毒牙に…」 毒牙に…。じゃねぇ! どんな電波受信すればそんなこと思いつくんだ? お前の頭の中には何が詰ってるんだ!? 俺は打ちひしがれて四肢を床についた_| ̄|○ そんな俺の頭をいいコ、いいコと撫でるチビ長門 そうだ、まだチビ長門のことには触れられていない続きを読まなくては ――結果は涼宮ハルヒの予想通り、物を買い与えていた。 誤解だ、買い与えたのは古泉で、妹が嬉しそうなのはいつでもだろう ――危機感を持った私はあなたに試験を課すことを決めた。 試験?それがこのチビ長門とどんな関係が? ――あなたの眼前に涼宮ハルヒの言う妹属性を持った少女が現れた場合、あなたがどういった対応をするのか? ――それが試験の内容。 ――追伸、明日の朝には元の姿に戻る。 手紙は以上だった。 むしろ、手紙は異常だった。 それでか、それでお前は自らの体を変化させ、性格や口調をハルヒの言う妹っぽく改造したわけか これが超思考存在にも恐れられるハルヒ効果なのか? あぁ、世界が電波に染まっていく 俺は久しぶりにちょっとだけ、本気で泣いた。 頭を撫で続けるチビ長門の存在を感じながら よし、復活 この非常識な世界で生きていくには強くなるしかない。 開き直った俺は、とりあえず何をするべきかを考えた 「…………………うん」 逃げよう 逃げてまた明日長門を訪ねて記憶を消してもらおう 目的を決めれば後は迅速、俺はチビ長門を優しく椅子に座らせると玄関に向かった。 そして絶望した。 見慣れたドアには張り紙が張られていた。 ――明日の朝まで脱出不可―― どうやら俺の行動は読まれていたらしい というか、俺が見つけられなかっただけで最初っから貼られていたっぽい さすがは長門と、言うべきなのか と、玄関で固まる俺をチビ長門が居間から呼ぶ 「キョンおじちゃん、ご飯つくってー」 すべてを諦めた俺は、 従者の如く、奴隷の如く、亡霊の如く働き始めた 現在の時刻22時丁度 語るも涙聞くも涙の苦難の道のりだった 何が辛かったって言うと――――― 19時10分 「キョンおじちゃん?」 このテストがどういった基準で行われているのかは俺の理解の範疇に無い。 そんな中で迂闊な行動はとれない、とりあえず俺はデフォルトのままおじちゃんで逝くことにした。 19時30分 「ミルクが飲みたいの」 料理に忙しかった俺が「冷蔵庫から勝手に取って飲みなさい」と言うと チビ長門は首を振ってこういった。 「おじちゃんのあったかいミルクが飲みたいの」 2、3回まな板に頭を打ちつけて心を静めた後、ホットミルクを作ってやった。 20時00分 食事中 「おいしいか?」 「うん、ユキおじちゃんの作ったものなら何でも大好き!」 それじゃあ、俺が自家生産したあったかいミルクはどうだい?とは言わなかった 20時30分 「おなかいっぱい」 あぁ、わかったから服を捲り上げて腹を見せないでくれ、桜色のポッチが見えそうだ 「じゃあ、お風呂だね」 それはもちろん「今からお風呂に入ります」という決意表明で、俺に同時入浴の荒業を成せと言ってるんじゃないよね? 「ユキと一緒に入りたくないの?」 泣き落とされた 20時50分 「これなーにー?」 あぁ、女を喜ばせるために神様から授かったものだよ。 「ふーん」 今の俺にまともなこと受け答えを期待しないでくれ。 天井を見つめて「古泉イツキ最高」と唱えるのに忙しい だから俺は幼い裸体ををチラチラと見ていないし、体全体でプニプニの肌とか感じてもいない 「ねー、キョンおじちゃん。もう体あったまったよ。」 うん?もうあがるのか? 「ううん、体を洗うの手伝って」 21時30分 危なかった。特に「キョンおじちゃん、胸の所がくすぐったいよ」と言われた時は一線を越えそうになった。 今は風呂も上がり、チビ長門とバニラのアイスキャンディーを舐めながらテレビを見ている。 「おいしいね!」 ああ、そうだね長門 長門は見た目に違わず無邪気に笑う だから、アイスの舐め方とか、口についたバニラがいやらしく見えるのは俺が有邪気だからだろう。 ――と、本当にいろいろなことがあった。 よく我慢したな俺、と少し股間を膨らませながら思う 今俺がいるのは寝室、チビ長門が眠たげに目をこすりだしたのでご就寝ということになった 俺とチビ長門はタオルケット一枚のみで同じベッドに寝ている。 クーラーが効いているとはいえ、温暖化の進む日本ではこのぐらいがちょうどいい ちなみに俺の寝巻きはジャージのズボンに袖なしのシャツ、長門はフル装備の猫柄パジャマ パジャマをどこから出したかは俺も知らない 俺としては溜まりに溜まったものを処理してから眠りたいのだが、右腕にぴったりとくっついたチビ長門がそれを許さない。 まぁ、それなりに精神を消耗したから眠れないことはなさそうだが 「…………」 …明日にはチビ長門ともお別れか そんなこと考えているうちに頭の中に靄が広がっていくのを感じた。 ?時??分 もぞもぞ動く気配を感じて目を覚ました。 首をわずかに動かして右腕を見た。 俺が目覚めたことに気がついていないのか、俺の片腕にとりつた何かは動きを止めない。 そこには予想を裏切らず、俺の腕を使って自慰ふけるチビ長門の姿 荒い息を吐きつつ、俺の腕を股に挟んで秘部を刺激している 俺のむき出しの腕はわずかに湿ったチビ長門のパジャマを感じとっていた。 これが最終試験というわけか?長門 ならば考えが甘かったな お前は日本の由緒正しき文化というものをまるで考慮に入れていない。 即ち、「据え膳食わぬは男の恥」という日本最高の文化をだ! 「どうかしたのかユキちゃん?」 俺はできるだけ優しく聞いてやった、裏にひそむ狼を気づかせないために 「!」 俺が寝ていると思っていたのだろう、驚いたチビ長門は淫靡な動きを止めた 「どうか、したのか?」 俺が重ねて聞くとチビ長門はおずおずと話し出した。 「キョンおじちゃん、あのね。おしっこする所が熱いの。ユキ、病気かな?」 そーか、そーか、熱いのか。 それなら大丈夫だ、その病気なら俺が治してあげられるから 「本当?」 あぁ、俺のぶっとい注射器で長門にお薬を注いであげるからね。 だから俺の言うことをきくんだよ 「うん、わかった」 いいコだ、いいコにはご褒美を上げよう 俺は体を起こしてチビ長門に覆いかぶさると、その小さな唇に自分の唇を重ねる。 一瞬驚いたようだったがチビ長門はキスが気にいったようで自分からも押し付けてきた。 (上等) チビ長門の意外な行動に、俺はレベルを一つ上げることにした 「?」 自らに触れる俺の舌の意味が分からないのか、唇を硬く閉じるチビ長門 いつもなら自分から開いてくれるのだが、それはそれ。 これならこれで楽しみようはある。 俺はチビ長門の小さく張りのある唇をゆっくりと舐めた。 舌先から伝わる味は極上、最高級の肉もこれには劣るだろう おいおい、前菜でこれかよ。 これは最後まで逝ったら死ぬな 死を覚悟した俺は、更なる味覚を求めて侵攻を再開した。 時間をかけて舐めたおかげでわずかに開いた口孔、そこに一気に俺の舌が侵入する! ぴくんっ 予想もしていなかったのだろう、パジャマごしにチビ長門の体が震えたのが分かった。 だがチビ長門の反応にはかまわず、俺は口内を暴くのに集中する。 唇を肉とするなら口の中は果物、蕩け堕ちる果肉に包まれ甘き蜜が満ち溢れる最高の果実だ 俺は更なる果肉を、蜜を求めて舌を縦横無尽に動かした。 舌を弄び、歯をなぞり、裏頬を抉り、唾液を奪う 今まで感じたことの無い刺激に戸惑うチビ長門、俺の舌から逃れようと顔を動かそうとする。 しかし、今の俺がそれを許す道理は無い 両の手を使い、チビ長門の顔を固定して反抗を防ぐ 「―――!」 今頃になって自分の目の前にいるものの恐ろしさに気がついたのか、体全体で暴れるチビ長門 だが悲しいかな所詮は子供の力、体重とわずかな力で動きを封じ込めることができる。 俺はやっとの事で大人しくなった肉を、ゆっくりと味わいだした。 5分ほどだろうか?我ながら熱中しすぎたようだ。 チビ長門は抵抗どころか、ピクリともしない。 顔を離してみると、真っ赤になったチビ長門が蕩けた目をして荒い息を吐いていた。 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よし) 乱れる幼女を見た感想が「よし」 俺は壊れているのかもしれん ま、とりあえずは―― 剥くか むしろ俺は人間失格らしい プチプチとパジャマのボタンをはずし、ご開帳。 もちろんシャツもブラもつけていないので僅かに朱に染まった肌が顔を出す 依然として抵抗が無いので、下のパジャマもパンツごと一気に脱がす 未完成の裸体が俺の前に現れる。 それは芸術だった 仄かに桜色に染まった白い肌 呼吸のたびに上下する未発達の胸 無駄な肉のついていない黄金率の足 そして、一切の穢れの幼い恥丘 そしてその全てのパーツが何の違和感も無く融合した未完にして完璧な芸術だった。 俺は数秒間、何があろうと忘れないように脳裏にこの光景を焼き付ける。 心ゆくまでチビ長門を鑑賞した俺は、芸術を汚す行為を再開する事にした。 両足をやや強引に開くが、チビ長門は無抵抗 若干物足りないものを感じるが、まあいい 薄明かりの元で見るチビ長門の股間は少し赤くなっている程度 これで俺の肉棒を受けるのは少しばかりきついだろう 仏心がわずかに顔を出した俺は、チビ長門に救いの手を差し出してやる事にした。 俺は掴んだ両足を持ち上げ、チビ長門の腰を強制的に俺の顔の位置まで持ってくる ここまですれやる事はひとつ、俺は秘部にゆっくりと舌を這わせた。 びくん、と今までとは違った反応を示すチビ長門 どこかに逝っていた意識が戻ったのか、四肢に力がこもる 「…キョン、おじちゃん?なにを、しているの?」 今の自分の状況が分かっていないのだろう、不安げな声が俺に質問してくる 「ユキちゃんの病気を治す注射の準備だよ」 だから、暴れちゃだめだよ 「…うん、…わかった」 純粋に俺を信じたのか、抵抗が無駄だと気がついたのかは謎だが了解は取った。 それじゃあ治療を始めよう 俺はチビ長門の赤くなったタテスジに再度、舌を這わせた。 まずはゆっくりと時間をかけて、唾液を塗りたくるように舌を使う しばらくするとチビ長門の割れ目から、唾液以外の液体が分泌されているのに気がついた。 「おじちゃん、…そこ、…くすぐったいよ」 そして熱いんだろう長門、大丈夫、わかっているよ 俺に任せておけばみんな幸せになれる、最初は痛いかもしれないが だけど最後は、必ず極楽へ逝くことができるよ。 百戦錬磨の俺が言うのだから間違いない 「うん、ユキがんばる」 OK、俺もがんばる とりあえずいい加減疲れたので、両足を掴んでいた手を離してチビ長門の腰を支える。 結果、見た目パイルドライバーをかけられているようなチビ長門ができあがる。 「おじちゃん、これ何?」 チビ長門が目の前にある俺の息子に戸惑いの声を上げる 「風呂場でも言っただろう?ユキちゃんを喜ばせるために神様から授かったものだよって。」 俺は優しく答えた。 「でも、…おっきくなってるよ」 それはね、おっきければおっきいほど女を喜ばすことができるんだ。 「ふーん」 どうやら質問タイムは終わったようだ。 俺は別にチビ長門にフェラを期待してはいない、間違って歯でもたてられたら事だ。 もししてもらうなら、もっと元気が無くて従順になった時がいいだろう。 そんなことを思いながら俺は自由になった指を使って割れ目を広げた。 俺の手によって開かれたそこは、わずかに愛液を滴らせて肉色の孔をさらけ出した 口の中に涎が溜まるを感じた。 俺は今までよりもさらに顔を近づけ、舌を挿し入れた。 くちゅ 「――あっ」 外側を舐められる行為とは違う、内側を侵される感覚にチビ長門は敏感に反応した。 その反応に気を良くした俺は、先程のディープキス以上に舌を動かした。 …ぴちゃ……くちゅ…ぬちゅ 「―――うぁ!…はぁっ、んっ、だめぇ!」 淫猥な音と未熟な嬌声が部屋を満たす 柔らかいくせに硬い幼肉は俺の舌を受け入れるように動いたと思えば、次の瞬間には弾き返そうと俺の舌を楽しませる。 小さな蜜壺は僅かな愛液で満たされ、何者も触れたことが無い場所を犯す行為は俺を昂ぶらせた。 俺はいったん口を離すと、自由になっている指の先をチビ長門の秘裂に潜り込ませた。 最初「え?」と軟体な舌とは違う、硬質な指の感触に戸惑うチビ長門 だがチビ長門が戸惑っている間も、俺の指は止まる事は無い。 第二間接が隠れるまで小さな淫裂にゆっくりと指を埋め込む それから、中指を折り曲げたり、伸ばしたり、角度を変えることで孔を掻き回、媚肉の感触を楽しむ 先程の舌の時にも感じた、この初々しくも淫らな感触にしばし酔いしれる。 チビ長門の方と言えば、先程よりもさらに深くを抉られる不快感に目を閉じて堪えている。 ならばと俺は中指をぴんっと伸ばすと、さらに深く指を埋める。 ずぷっ 「――ああ、あ」 体内に侵入した異物に惚けたよう口を開け、涎をたらすチビ長門 と、中指が肉壺の中で壁のようなものに行きあたった。 体が小さくなっているので期待はしていたが、本当に処女膜がありやがる。 たまらなくなった俺は、指を一気に引き抜き「ひぅっ」口を大きく開け唇を完全にチビ長門の股間に口づける そして一気に愛液をすすり上げた。 ずずずっと重い水音が響き渡る 「――ふあああああああああぁぁぁぁ!」 チビ長門は中心から蜜と言わず媚肉までをも吸い上げられそうな力に、軽く達してしまったようだ せっかく戻りかけていた意識が、またどこか遠くに逝ってしまった。 俺としては今からすることにあまり騒がれても興醒めなので、丁度良いといえば丁度良かった。 チビ長門を固定していた腰を離し、仰向けに寝かせる。 まず俺は発射寸前の弓のように自らの腰を曲げ、力をためる。 それから両手を使い、チビ長門の左右の太ももを強めに掴んだ そして力の篭っていない両の足を無理やり開き、チビ長門を引っ張ることで幼い秘裂に俺の肉棒をそえる。 チビ長門は「ぴくん」と反応したが、それだけだった。 もちろん俺は心優しいので息子に唾をつけておくのを忘れない。 さて、準備完了だ 後はどうやって挿入するかだが、チビ長門のサイズじゃ俺のはあまりにも大きすぎるだろう 別に大きさを自慢するわけじゃない、中指一本できつかった現実を元に演算しているだけだ。 いくら人体の神秘を考慮に入れようともかなりの激痛を伴うのは明白だ、そこで俺は…… 一気に、貫くことにした。 やめるという選択肢は最初から皆無だった ずぶっっっっ! 一瞬だ、一秒にも満たない一瞬で俺の剛直はチビ長門の処女膜を破り、膣の最奥まで侵入を果たした。 俺の息子は、肉を断つような感覚の他にも処女膜を破る感覚もしっかりと俺に伝えた。 俺は無垢の雪を汚すような達成感にしばしの間、酔いしれた。 「…?………っ!…あ…あ…あぁ……いっ、いたぃ」 最初、茫洋な感覚では何が起こったのか分からなかったのだろう、頭に疑問符をつけていたが 意識がはっきりとすると同時に痛覚もはっきりしてきたのか、弱弱しい声で痛みを訴える 「いぅ…おじちゃん?なにしてるの?」 呼吸するだけでも痛みが走るらしく、浅い呼吸の中で穢れの無い瞳が俺に問うた 「今、ユキちゃんに注射をしたんだよ。注射は痛いものって決まっているだろう?」 俺は、あくまでも優しく答えた。 チビ長門がわずかに頷く 「ユキちゃんはいいコだから我慢できるだろう?」 もう一度頷く 俺はチビ長門の頭をよしよしと撫でると一息に腰を引こうとした。 しかし、子供特有の直感でそれに気がついたのか、チビ長門が制止の声を上げる 「まって、いま、痛いの。うごくのやめっ!あ、あぐぅぅぅぅっ」 が、止まれと言われて止まる馬鹿はいない、俺は勢いよく雁首の所まで引き抜いた。 真っ赤に染まった肉棒が、何よりも醜悪に見えた。 チビ長門が体の一部に空洞ができたような感覚と痛覚を刺激されて悶えている 目を見開き、限界まで開いた口からは小さな舌が突き出ている 体は弓のようにしなり、背骨が折れるんじゃないかと心配になるほどだ ある程度落ち着いた所で、また限界まで刺し貫く! 「ぎぃっ!」 腰と腰が打ち合った瞬間、あまりの勢いに微量の愛液と共に破瓜の血が宙を舞った。 俺とチビ長門、双方に赤い斑ができる。 その紅さに思わず目を奪われた俺は、もっともっとと腰を打ちつけ媚肉を削る。 「―――がっ、うっ、んっ、ぎっ、いっ、いやぁっ」 体の中心に走る異物感に目を回すチビ長門 しかし、その動きからは抵抗というよりも、少しでも痛みを減らそうとする悲しい女の本能が感じられた。 次第に悲鳴が小さくなっていくのがその証拠だ だが、それでは俺がつまらない 俺は少女の努力を嘲笑うかのように縦の動きに横の動きを加える、同時に肉を裂く感触がいっそう強くなる 完全なランダム、縦の動きならばリズムを覚えれば何とかなるが、それに横の動きが加わるなら話は別だ。 「――っ!!!うああっ!がぁっ!あぶっ!はぁっ!!」 あるいは元の長門にはどうにか対処できたかもしれない、…が今のチビ長門に性交の経験は無い。 結果、俺の腰の動きに合わせて悲鳴を上げる哀れな人形が出来上がる。 「――あっ、うっ、あっ、らぁっ、いふっ」 俺の腰の動きに合わせて声らしきものを上げるチビ長門 顔を見れば瞳は何の光も写さず、ただ涙を垂れ流していた だが驚いたことに、口のほうは唇の端を僅かに吊り上げて心なしか笑っているように見えた。 信じていたものに裏切られ、絶え間なく続く激痛が少女の大切な部分を壊してしまったのかもしれない。 「うっ」 しかし、俺のほうも限界が近い 性交によって得られる快楽よりも、幼女を犯す背徳感のほうが俺を昂ぶらせていたようだ 肉棒の根元に今日一日、溜まりに溜まった熱く、ドロドロとしたモノが集まるのを感じた。 俺は限界を感じたその瞬間 抜けるか抜けないかのギリギリのとこまで引き抜き、そして一気に限界までチビ長門を貫いた。 ドクン! 「――――くっ」 チビ長門の子宮の一番奥に出すべく掴んだ腰を、痛くなるほど自らに押し付ける。 精液が放つたびに真っ白になっていく頭の中、それでもチビ長門を掴む手が緩むことは無かった。 数十秒ほど出し続け、俺は射精の痙攣が収まったのを確認してからチビ長門を掴んでいた手を離した。 手を離してもくっきりと残る俺の手の痕、どうやら少し力を込めすぎたらしい。 「ユキちゃん?お薬をたくさん出しておいたよ。」 「………」 俺は殊更優しい声で、チビ長門に声をかけた 対するチビ長門は無反応 いや反応しているかもしれないがあまりにも微細な動きなので、俺に認識することができないのだろう。 それならば、と俺はいい事を思いついた。 「ユキちゃん、病気は治ったかな?」 やはり、チビ長門は反応しない 「まだおしっこする所が熱い?お薬は効いていないかな?」 そう優しく聞くと同時に、俺は腰を一振りした いまだに繋がっているチビ長門は俺の動きに合わせて揺れる、当然首のすわってない頭も縦に揺れる。 そうまるで、頷くかのようにチビ長門の首が揺れた。 「そうか、まだか。」 もし、今俺の前に鏡があれば、嗜虐的に笑う男の顔が見れたことだろう。 俺の考えが、残酷な考えが分かったのか、急速に意思の光を取り戻すチビ長門の瞳 しかし遅い、俺は絶望的な宣告を高らかに謡った。 「ならしょうがない。おじちゃんは辛いけどまだ治療を続ける必要があるみたいだね。 ちょっと痛いかもしれないけど大丈夫、ユキちゃんはいいコだから我慢できるよ。」 俺はチビ長門の口から否定と拒絶の言葉が発せられる前に、腰の動きを再開した。 「それでは、治療を再開します。」 童女の悲鳴が闇夜に響いた。 9時50分 あぁ、太陽が緑色だ。 俺はぐったりと大の字に寝たまま太陽の日差しで目を覚ました。 あの後、壊れチビ長門の上下左右、その全てを犯している時にある問題が発生した。 それは………チビ長門の体力と、快楽への貪欲さが俺の予想はるかに上回っていたのだ。 ある程度俺の肉棒になれ、少しづつ快楽を感じるようになってから奴は豹変した。 自ら腰を振り、新たなる刺激を求めて試行錯誤する しかも、体力に底が無いかのように激しく動くのだ もしかしたら体が縮小された分、余ったエネルギーが体力にまわされたのかもしれない おかげでいつもの長門だったら、終始俺が主導権を握ることができるのだが 昨夜は後半の方は、押されっぱなしだった。 現に、昨日の最後の記憶は俺にまたがり狂喜乱舞するチビ長門の姿である。 こんな化け物の相手にしていたら三日で枯れてしまう。 俺はもはや感覚の無い股間を押さえて身震いした。 と、そこで俺の顔に影がさした。 つまり俺と太陽の間を何者かが遮ぎったということだ。 逆光で表情は分からなかったが、誰かは分かった。 いつもの長門、つまり高校一年生文学少女タイプの長門だ。 長門は何も着てはいなかった、と言うか体中精液まみれで動くたびに固まった白濁液がはがれている。 やはりチビ長門は、いつもの長門が小さくなった姿のようだ 俺が氷解した謎に満足したその時、ノーマル長門が重々しく口を開いた。 「結果発表」 どうやら昨日言っていたテストの結果が出たらしい。 俺としては何を今更といった感じだ、昨日チビ長門に手を出した時点で覚悟はできている。 「涼宮ハルヒ発案の、キョン・シスコン説」 俺はすがすがしい気持ちで判決を待った 「証拠不十分により疑惑の域を出ず、よって無罪」 なにっ!と俺は無様にも驚いていた。 あそこまでして無罪と言うならば、何をすれば有罪になるというのだ! 俺は挑むように長門を見た。 そこで俺は、長門の結果発表が終わっていない事に気がついた。 「――が、同涼宮ハルヒ発案のキョン・ロリコン説、私の現状をもって証拠十分とする」 ハルヒの奴、そんなことまで言っていやがったのか。 俺は心の中で今度ハルヒに会ったら問答無用、公衆の面前でぶち込んでやろうと神に誓った。 「よって、有罪」 まぁ、当たり前だ文句は無い が、どんな刑が下るのかには興味があった。怖いもの見たさの精神で、だが 「涼宮ハルヒによると、ロリコンに処置なしとの事、よって不能の刑に処す」 長門の言葉が終わったその時、俺の視界を太陽の日差しが満たした。 だがおかしい、陽光は長門がさえぎっていた 長門は一歩も動いていないのになぜ太陽が顔を出す? やっとのことで目がなれた俺は、光の中に絶望的な影を見た。 「おじちゃん、お医者さんごっこしよう?」 つまりは、枯れ果てろ言うことか長門 俺は「いくぞー」の掛け声の下、俺に跨るチビ長門を視界に捉え 気を失った。涼宮ハルヒのSS 厳選名作集 長編 長門ユキの牢獄